研究実績の概要 |
本研究では、遺伝子発現の制御に連動する配列化されたヌクレオソーム多量体の高次構造について、これらをDNAオリガミ構造体に集積し、DNAオリガミの持つ空間を使って、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)により動的な状態で1分子の解像度で可視化する技術を開発する。今年度は、ヌクレオソーム多量体を観察するためのDNAオリガミ構造体を作製した。2次元長方形中心部に1,000塩基対あるいは1,500塩基対の2本鎖DNAを配した構造体を作製し高速AFM観察を行った。また、ヌクレオソーム多量体を結合するためヌクレオソーム結合サイト間の距離を25塩基対あるいは30塩基対の間隔に制御した2本鎖DNAを合成した。DNAオリガミに結合するリンカーを導入したPCR生成物によりヒストン多量体の再構成を行った。また、ヒストンH1を模して、2本鎖DNAの複数個所を結合安定化する人工の転写因子の開発を行った。前年度に引き続きDNA配列認識分子としてdCas9/sgRNA複合体をRNA鎖を介して2量化し、様々なコンフォメーションでターゲット2本鎖DNAの配列化に成功した。 エピジェノミック修飾がヌクレオソーム相互作用に与える影響観察するため、代表的なヒストンテール修飾であるH3 K9me3を導入したヌクレオソームを作製した。H3 K9C変異体を2-bromoethyltrimethylammoniumでアルキル化し誘導体を作製し質量分析で合成を確認した。再構成後、DNAオリガミ構造体に導入し、修飾ヌクレオソーム間の相互作用を高速AFMで観察した。修飾ヌクレオソームはDNAオリガミ構造体内で安定に存在でき、ヌクレオソーム間の相互作用とH3 K9me3に相互作用するHP1 (heterochromatin protein 1)により安定化されることが高速AFMにより観察された。
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