研究課題/領域番号 |
21H02072
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
井本 正哉 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任教授 (60213253)
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研究分担者 |
斉木 臣二 順天堂大学, 医学部, 客員教授 (00339996)
野田 展生 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (40396297)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ユビキリン / αシヌクレイン |
研究実績の概要 |
テーマ1:ユビキリンのLLPSとSO286によるアグリソームクリアランス これまでに試験管レベルおよび細胞レベルでユビキリン1がLLPSを誘導することで液滴形成し,その液滴にα-シヌクレイン (aSyn)が取り込まれることを見出してきたが,これがどのような生理的・病理的意味を示すかが不明であった.一般に液滴は,時間依存的に液体としての性質を消失し,ゲル化することが報告されている.そこで試験管レベルでユビキリン1および2,4の液滴の時間変化を測定したところ,ユビキリン1の液滴は72時間以降でゲル化が観察された.一方,ユビキリン1は120時間までゲル化が観察されず,ユビキリン4の液滴はかなり早い段階から液性を消失させてゲル化していることがわかった.さらに電子顕微鏡観察でaSynを取り込んだユビキリン2の液滴はゲル化にともなって,ユビキリン2とaSyn複合体のフィブリル形成が誘導されたことがわかった. テーマ2:Miclxinによるアグリソーム形成機構 Miclxinがアグリソーム形成を促進したことから,その標的タンパク質であるMIC60の機能阻害が騰ソーム形成を誘導するか検証した.3種類のMIC60のsiRNAをSH-SY5Y細胞に導入し,MIC60の発現抑制を確認した状態でもアグリソーム形成は誘導されなかった.このことから,Miclxinによるアグリソーム形成促進にはMIC60以外の標的タンパク質が関与することがわかった.そこで,Miclxinの類縁化合物の中から,Miclxin同様,アグリソーム形成を促進活性を有し,さらにMIC60に作用しない化合物を探索した.その結果,JU23と命名した新規化合物に目的の活性を見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テーマ1においては,これまでユビキリン1の液滴がaSynを取り込むことから,SO286を用いてその生理的意義を検討してきたが,ユビキリン1の液滴の持つ役割を見出すことができなかった.そこで,ユビキリン2や4においても同様の検討を行った結果,ユビキリン2の液滴がaSynのフィブリル化を誘導する因子であることを見出した.現在までにaSynのフィブリル化形成については,非常に高濃度のaSyn(200 micro M)を用いて,長時間(30 days)の反応で観察されるという報告があるが,生理的に起こっている反応とは思えない.その点, aSynのフィブリル化にはユビキリン2が関与するという我々の発見は,パーキンソン疾患の患者脳で見られるaSynフィブリル形成の生理的・病理的なメカニズムの解明に貢献できる可能性があり,順調に研究は進捗していると思える. テーマ2については,我々はMiclxinのがん治療の標的タンパク質としてMIC60を同定していたこともあり (ACS Chem Biol. 2020, 15(8):2195-2204),アグリソーム形成制御タンパク質のMIC60について解析を進める予定であった.しかし,MIC60のノックダウンによってもアグリソーム形成が促進されなかったことから,MIC60以外のタンパク質が関与することが示唆された.しかし,Miclxin類縁化合物の中から,MIC60に作用することなく, アグリソーム形成を誘導する化合物JU23を見出した.さらに,JU23は細胞内のaSynをオリゴマー化させて不溶化することも確認できたことから,JU23の標的タンパク質同定を起点に,アグリソーム形成制御機構の解析へと展開する.したがって,今後解析に用いる化合物はMiclxinからJU23に変更することとなったが,研究そのものの方向性は変わらず順調に展開されている.
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今後の研究の推進方策 |
テーマ1:ユビキリンのLLPSとアグリソームクリアランス これまでに試験管レベルでユビキリン2がLLPSを誘導して液滴を形成し,その液滴にaSynが取り込まれ,時間経過とともにユビキリン2/aSyn複合体がフィブリルを形成することを見出した.最終年度は,以下の点をクリアーにすることで論文化を目指す.1)試験管レベルで形成されるユビキリン2/aSyn複合体の詳細な構造を解析するためにAFMによる解析を行う.2)in vitroでaSynのユビキリン2に対する結合ドメインを決定する.3)蛍光タグしたaSyn発現SH-SY5Y細胞に,ヒ素などのストレスを与えた時に形成されるユビキリン2/aSyn複合体のゲル化が起こるかどうかをチオフラビンS染色やFRAPアッセイによって検証する.4)aSyn発現SH-SY5Y細胞に,ヒ素などのストレスを与えた場合の,ユビキリン2液滴に取り込まれるタンパク質の解析を行う.すでに,オートファジー関連タンパク質ATG13やLC3が取り込まれていることは確認済みであるが,さらにオートファジー関連タンパク質についいて検証し,ユビキリン2液滴とオートファジーの関係を解析する.5)上記1)から4)についてSO286がどのような効果を示すのかを解析する. テーマ2:JU23によるるアグリソーム形成機構の解析 JU23のビオチン標識体の合成は,委託業者によって合成され,すでに入手している.このJU23のビオチン標識体は細胞レベルでアグリソーム形成を促進することを確認済みであることから,これを用いてJU23の結合タンパク質を同定する.おそらく複数のタンパク質が同定されることが予想されるので,それらのsiRNAを用いてノックダウンすることでJU23のアグリソーム形成促進の標的タンパク質を同定する.これを起点にアグリソーム形成機構の解析を行う.
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