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2021 年度 実績報告書

光化学的RNA編集を志向した新規RNA操作法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21H02076
研究機関北陸先端科学技術大学院大学

研究代表者

藤本 健造  北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90293894)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードRNA光クロスリンク / RNA編集 / ゲノム編集 / 超高速RNA光架橋
研究実績の概要

本研究では、新規光応答性人工核酸開発を通して正確なRNA操作を創出し、アップコンバージョン用ナノ粒子を用いるなど長波長励起によるRNA操作を組み込むことで、最終的に細胞内で時空間制御可能な光化学的RNA編集法の確立を目的とする。
本年度は、長波長励起によるRNA操作のための新規光架橋素子メチルピラノカルバゾール(MEPK)の合成に成功した。このMEPKを含むオリゴ核酸の光架橋能を評価したところ、400 nmの光を数秒間照射することにより相補鎖中のチミンと光架橋することを見出した。一方、どれだけ長時間光照射をおこなっても相補鎖中のシトシンと光架橋しないという思いもよらない結果が得られた。この結果の一般性を確認するため、MEPKの周辺配列を変化させた16種類のオリゴ核酸を用いて光架橋能を解析したところ、チミンとは超高速(秒単位)で光架橋するのに対してシトシンとは全く光架橋しないことを見出した。これまでに開発済みの光架橋素子はシトシンと容易に光架橋することからMEPK固有の反応特性であることを確認した。この光架橋反応はRNA鎖中のシトシンと反応しないことから、正確なRNA操作に向けて重要な反応開発に成功したと考えられる。次にシトシン誘導体(シトシン、メチルシトシン、ヒドロキシメチルシトシン、トリフルオロメチルシトシン)に対して光化学的塩基編集をおこなった。各シトシン誘導体の変換速度と分配係数(LogP)の関係を調べたところ、親水性が高ければ高いほど、塩基変換が速いことを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、長波長励起によるRNA操作に向けた新規光架橋素子メチルピラノカルバゾール(MEPK)の合成及び、シトシン(C)からウラシル(U)へのピンポイントRNA編集にターゲットシトシン周辺環境が与える影響に関する解析をおこなった。ピラノカルバゾールの4位にメチル基をもつメチルピラノカルバゾール(MEPK)を一般的な芳香族骨格形成法として知られるペヒマン縮合を利用して高収率で合成した。さらに、シトシンとは全く光架橋せずチミン特異的に光架橋するという思いもかけない特性をMEPKが有することを見出した。この光架橋反応はRNA鎖中のシトシンとも反応しないことから、正確なRNA操作に向けて重要な反応開発に成功したと考えられる。既に開発済みのシアノビニルカルバゾール誘導体を用いてシトシン(C)からウラシル(U)へのピンポイントRNA編集をおこなった後、今回開発に成功したこのウラシル特異的な光架橋素子(MEPK)を用いれば、化学編集されたウラシルを含むRNAだけに光架橋し保護するような正確なRNA操作が可能と考えられる。次にシトシン誘導体(シトシン、メチルシトシン、ヒドロキシメチルシトシン、トリフルオロメチルシトシン)を用いた塩基編集をおこなった。その結果、シトシンはウラシルへ、メチルシトシンはチミンへ、ヒドロキシメチルシトシンはヒドロキシメチルチミンへ、トリフルオロメチルシトシンはトリフルオロメチルチミンへの変換を確認した。また、各塩基の変換速度と分配係数(LogP)の関係を調べたところ、親水性が高ければ高いほど、変換速度が速いことを明らかにした。以上のことから、おおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

精密な細胞内光化学的RNA編集に向け、引き続きカルバゾール含有グアノシン(GK)誘導体を合成する。グアノシンを原料とし、塩基部分のBz保護、5'位のDMTr保護の後、リンカーを介し、カルバゾールを糖の3'位に導入する。その後、アミダイト化をおこない、DNA合成機によりGK含有オリゴDNAを得る。カルバゾール導入時のリンカーとなるメチレン鎖長を変数とし、シトシンに対して最も光架橋する素子を選別する。光反応部位にカルバゾールではなく、ピラノカルバゾールを導入したGK誘導体の合成もおこなう。GK誘導体含有オリゴDNAとその相補鎖RNAを混合し光照射した後、HPLC解析により光架橋・開裂反応評価をおこなう。また、光架橋したDNAを酵素分解し、シトシンとの光架橋ダイマーを取り出したのち、1H-NMR, 13C-NMR, HSQC, HMQCによる構造決定をおこなう。さらに、オフターゲット効果克服に向けて、対合塩基認識能の評価をおこなう。シアノビニルカルバゾールは対合塩基認識能を持たないため、対合塩基がA, T, G, Cいずれの塩基であってもTm値に変化はない。一方、今回合成するGK誘導体は塩基部分に天然塩基を保持しているため、相補的な塩基のみ高いTm値を示すと考えられる。各種熱力学的パラメータ(ΔG, ΔH, ΔS)を評価し、糖2'位の炭素でDNAバックボーンと繋がった歪んだ構造に起因する負の効果とスタッキングによる正の効果が、どのように熱的安定性に寄与して天然DNA-RNA2重鎖の熱的挙動に相似させているのか明らかにする。

  • 研究成果

    (24件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] The effect of 5-substituent in cytosine to the photochemical C to U transition in DNA strand2021

    • 著者名/発表者名
      Fujimoto Kenzo、Licheng Wan、Nakamura Shigetaka
    • 雑誌名

      Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters

      巻: 35 ページ: 127812~127812

    • DOI

      10.1016/j.bmcl.2021.127812

  • [雑誌論文] Photocrosslinking of DNA using 4-methylpyranocarbazole nucleoside with thymine base selectivity2021

    • 著者名/発表者名
      Mihara Jun-ichi、Fujimoto Kenzo
    • 雑誌名

      Organic and Biomolecular Chemistry

      巻: 19 ページ: 9860~9866

    • DOI

      10.1039/D1OB01621K

  • [雑誌論文] The inhibition effect of photo-cross-linking between probes in photo-induced double duplex invasion DNA2021

    • 著者名/発表者名
      Fujimoto Kenzo、Hirano Ayumu、Watanabe Yasuha、Shimabara Ami、Nakamura Shigetaka
    • 雑誌名

      ChemBioChem

      巻: 22 ページ: 3402~3405

    • DOI

      10.1002/cbic.202100430

  • [雑誌論文] Photoinduced aggregation of liposome modified with DNA containing ultrafast DNA photo-cross-linker2021

    • 著者名/発表者名
      Fujimoto Kenzo、Ichikawa Masakatsu、Nakamura Shigetaka
    • 雑誌名

      Journal of Chemical Technology and Biotechnology

      巻: 97 ページ: 295~298

    • DOI

      10.1002/jctb.6941

  • [学会発表] 細胞内RNA光編集に向けた光応答性人工核酸開発2022

    • 著者名/発表者名
      多田龍生、藤本健造
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会(2022)
  • [学会発表] RNA定量検出に向けた超高速光架橋核酸プローブの開発2022

    • 著者名/発表者名
      篠崎一世、藤本健造
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会(2022)
  • [学会発表] 光架橋型RNA-FISHにおける配列選択性評価2022

    • 著者名/発表者名
      成田泰之、藤本健造
    • 学会等名
      日本化学会第102春季年会(2022)
  • [学会発表] 大腸菌16SrRNAを標的とする超高速RNA光架橋を用いた新規FISHの開発2021

    • 著者名/発表者名
      三原純一、渡辺ななみ、橋本実沙季、藤本健造
    • 学会等名
      日本ケミカルバイオロジー学会第15回年会
  • [学会発表] ビニルカルバゾール誘導体による超高速DNA光架橋反応を用いたメチルシトシンの検出2021

    • 著者名/発表者名
      篠崎一世、中島涼、中村重孝、藤本健造
    • 学会等名
      日本ケミカルバイオロジー学会第15回年会
  • [学会発表] 可逆的DNA光クロスリンクを用いたDNA編集に標的シトシン5位の置換基が与える影響2021

    • 著者名/発表者名
      中村重孝、万李成、藤本健造
    • 学会等名
      日本ケミカルバイオロジー学会第15回年会
  • [学会発表] Development of novel FISH using ultrafast RNA photo-cross-linking targeting the difficult-to-detect region of E. coli 16S rRNA2021

    • 著者名/発表者名
      Junichi Mihara、Nanami Watanabe、Misaki Hshimoto、Kenzo Fujimoto
    • 学会等名
      第22回日本RNA学会年会
  • [学会発表] Study of photochemical RNA C to U editing via ultrafast photo-cross-linking using 3-vinylcarbazole derivatives and Inosine2021

    • 著者名/発表者名
      Shigetaka Nakamura、Kanako Ishino、Kenzo Fujimoto
    • 学会等名
      第22回日本RNA学会年会
  • [学会発表] 超高速光架橋反応を用いたメチルシトシンからチミンへの光化学的塩基編集2021

    • 著者名/発表者名
      篠崎一世、万李成、中村重孝、藤本健造
    • 学会等名
      第15回バイオ関連化学シンポジウム
  • [学会発表] ピラノカルバゾール誘導体を含む可視光応答性新規DNA光クロスリンカーの開発2021

    • 著者名/発表者名
      成田泰之、三原純一、笹子しのぶ、藤本健造
    • 学会等名
      第15回バイオ関連化学シンポジウム
  • [学会発表] 標的シトシンの周辺塩基が可逆的RNA光架橋反応を用いたRNA編集に与える影響2021

    • 著者名/発表者名
      川添秀、石野佳奈子、中村重孝、藤本健造
    • 学会等名
      第15回バイオ関連化学シンポジウム
  • [学会発表] Development of DNA/RNA editing with site-specific C->U conversion using reversible photo-cross-linking2021

    • 著者名/発表者名
      Jun-ichi Mihara、Kanako Ishino、Shigetaka Nakamura、Kenzo Fujimoto
    • 学会等名
      ISNAC2021
    • 国際学会
  • [学会発表] RNA FISH of 16S rRNA in E. coli using multiple probes containing ultrafast RNA photo-cross-linker2021

    • 著者名/発表者名
      Zumila Halili、Nanami Watanabe、Shigetaka Nakamura、Kenzo Fujimoto
    • 学会等名
      ISNAC2021
    • 国際学会
  • [学会発表] 超高速光架橋反応を利用したメチルシトシンからチミンへの光化学的ピンポイント核酸塩基編集2021

    • 著者名/発表者名
      篠崎一世、万李成、中村重孝、藤本健造
    • 学会等名
      2021年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [学会発表] 光を用いたピンポイント核酸塩基編集に標的シトシンの対合塩基が与える影響2021

    • 著者名/発表者名
      武田海、石野佳奈子、中村重孝、藤本健造
    • 学会等名
      2021年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [学会発表] 可逆的RNA光架橋反応を用いた細胞内RNA光化学的C to U変換2021

    • 著者名/発表者名
      多田龍生、石野佳奈子、中野雅元、中村重孝、藤本健造
    • 学会等名
      2021年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [学会発表] カルバゾール骨格を有する可視光応答性新規光架橋素子の開発2021

    • 著者名/発表者名
      成田泰之、三原純一、笹子しのぶ、藤本健造
    • 学会等名
      2021年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [学会発表] RNA光架橋反応を用いた細胞内アンチセンス効果の光制御2021

    • 著者名/発表者名
      三原純一、Hang Yong Chun、藤本健造
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会2021
  • [学会発表] 可視光で光架橋可能なピラノカルバゾールを用いたRNA FISH法の開発2021

    • 著者名/発表者名
      成田泰之、橋本美沙希、藤本健造
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会2021
  • [備考] 藤本教授らの論文がOrganic & Biomolecular Chemistry誌の表紙に採択

    • URL

      https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/info/2021/11/29-1.html

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公開日: 2022-12-28  

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