研究課題
本年度の実施内容は以下の4項目である。1. PGKが光合成を律速しうるかの検証 PGKをRNAi法にて抑制したイネを作製したところ、PGKタンパク質の量が最小で野生型の2割程度に減少した系統を得た。しかし、強光及び種々のCO2濃度条件の光合成速度には野生型との大きな差は見られなかった。このため、PGKはイネにおいて光合成を律速する因子とはならないとの結論となり、PGK増強イネの作製は中止することとした。2. 交配によるRubiscoとの同時増強イネの作製 Rubisco・GAPDH増強イネとTPI増強イネの交配を先行して行い、遺伝子導入及びこれらのタンパク質の定量によるスクリーニングを行ったところ、いずれのタンパク質も増加した系統が得られた。増加量の定量的評価は今後行う必要がある。3.TPI 増強イネの光合成特性・個体生育の解析 TPI量が野生型の約5倍及び12倍に増加した2系統が得られ、強光・高CO2条件下の光合成速度が10%弱上昇していた。このため、TPIの増強は、わずかではあるが、カルビンサイクル代謝の促進による光合成能力強化に有効であるとの結論となった。ただし、これらの系統では高CO2環境でのバイオマス生産量には増加がみられなかった。バイオマス生産性の強化のためには、さらなる光合成能力の強化が必要であると考えられた。4. その他 TPI抑制イネの詳細な光合成特性を評価した。その結果、光合成速度及び光合成代謝の変動から、TPIを抑制すると光合成が無機リン酸の利用性により律速されるようになることが明らかとなった。このため、TPIは光合成代謝における無機リン酸の利用に寄与していると言える。加えて、今後の光合成能力改良に向けた基礎的研究も行った。
1: 当初の計画以上に進展している
遺伝子組み換えイネの作製やその解析が前倒しで進行しているため。
今後はRubisco・GAPDH・TPIイネの光合成特性の解析を主眼として行う。また、TPI抑制イネの光合成が興味深い特性を示していたため、余裕があればさらなる解析も行う。
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Plant Physiol.
巻: 188 ページ: 1150-1162
10.1080/00380768.2021.1915100