• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

宿主にとってよそ者であるプラスミド自身が外来遺伝子のサイレンサーを持つ理由の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21H02097
研究機関東京大学

研究代表者

水口 千穂 (鈴木千穂)  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10733032)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードプラスミド / 核様体タンパク質 / H-NS
研究実績の概要

本研究では、プラスミドと宿主染色体にコードされるH-NSファミリータンパク質(核様体タンパク質の一種)が協調的に機能するメカニズムを様々なホモログで明らかにすると同時に、各ホモログ間での共通点と相違点を明らかにすることを目指している。2022年度はH-NSファミリータンパク質の二量体・多量体形成様式の比較を行うため、Pseudomonas putida KT2440株染色体由来のTurBについて構造解析を実施した。私達は過去にTurBの二量体・多量体化ドメインの結晶構造を明らかにしているものの (FEBS Lett., 2016, 590: 3583-94)、当時は多量体形成に必要な二箇所の二量体化部位のうちterminal dimerization site (TDS) にアラニン置換を導入したタンパク質を使用していた。そこで本研究ではcentral dimerization site (CDS) の一部を除去したタンパク質を使用し、分解能2.7Åで結晶構造を決定することで、アラニン置換を含まないTDSの二量体形成機構を明らかとした。TDSの構造が腸内細菌のH-NSとは大きく異なっていたことから、H-NSが腸内細菌の、TurBがPseudomonas属細菌の核様体形成に特化した進化を遂げた可能性を示唆していると考えられた。
一方、昨年度の研究から、Pseudomonas resinovorans CA10dm4株の染色体上遺伝子mvaTを破壊すると、プラスミドpCAR1の宿主細胞内での安定性が著しく低下することが明らかとなっていた。そこでCA10dm4株のmvaT破壊株を材料として、MvaTと他のH-NSファミリータンパク質との互換性の評価を試みたが、pCAR1と相補用ベクターを宿主に同時に保持させることが困難であったため、今後は染色体からの相補を試みることにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「研究実績の概要」で述べたように、2022年度はH-NSファミリータンパク質の二量体・多量体形成機構の多様性の評価について一定の成果を得ることができた。しかし、当初計画していたP. resinovorans CA10dm4株のmvaT破壊株を材料としたH-NSファミリータンパク質の互換性の評価については、実験系の構築で難航したため思うように進まなかった。一方、pCAR1にはMvaTのホモログであるPmrがコードされているため、CA10dm4株のmvaT破壊株でpCAR1が不安定化する現象は、Pmrが染色体由来MvaTの機能を相補できていないことを示唆している。そこでPmrとMvaTの機能の違いをタンパク質レベルで検証するため、大腸菌を宿主とした異種発現に取り組んだが、PmrやP. putida KT2440株染色体由来のTurA、TurBが容易に発現・精製可能であったのに対し、MvaTは様々な条件を変更しても大腸菌内で発現させることができなかった。これらの結果は、他の細菌種のH-NSファミリータンパク質だけでなく、Pseudomonas属細菌のMvaTホモログ内にも機能の多様性があることを示唆している。以上の状況から、難航している点はあるものの、今後研究を進める上で重要な知見が得られたことから、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

P. resinovorans CA10dm4株のmvaT破壊株を材料としたH-NSファミリータンパク質の互換性の評価については、今後は染色体からの相補を試みることとする。一方で、CA10dm4株由来のMvaTがPseudomonas属細菌の他のMvaTホモログとも異なる機能を有する可能性があるため、他種のH-NSファミリータンパク質との比較だけでなく、MvaTホモログ内での比較も進めていく。今年度の結果から、大腸菌を宿主としたMvaTの異種発現は困難であると判断し、今後はCA10dm4株から直接MvaTを精製し機能解析を進める計画である。また、二量体・多量体形成機構の多様性の評価では、構造未知のH-NSファミリータンパク質についてはAlphaFoldやMDシミュレーションも利用しながら評価を進めたいと考えている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Pseudomonas resinovorans CA10株の染色体由来H-NS様タンパク質はプラスミドpCAR1の安定性に寄与する2023

    • 著者名/発表者名
      盧 梁凝、水口 千穂、岡田 憲典、野尻 秀昭
    • 学会等名
      日本農芸化学会2023年度大会
  • [学会発表] Pseudomonas属細菌のH-NSファミリータンパク質TurBの末端二量体化部位の結晶構造2023

    • 著者名/発表者名
      水口千穂、Vasileva Delyana、荒川孝俊、岡田憲典、野尻秀昭
    • 学会等名
      2022年度量子ビームサイエンスフェスタ
  • [学会発表] Function of the pCAR1-encoded MvaT homolog on the fitness of pCAR1-harboring pseudomonads2022

    • 著者名/発表者名
      Liangning Lu, Chiho Suzuki-Minakuchi, Kazunori Okada, Hideaki Nojiri
    • 学会等名
      International Symposium on Plasmid Biology 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Pseudomonas属細菌のMvaTホモログがプラスミドpCAR1保持に与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      盧 梁凝、水口 千穂、岡田 憲典、野尻 秀昭
    • 学会等名
      第20回微生物研究会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi