研究課題/領域番号 |
21H02107
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
善藤 威史 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50380556)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 抗菌ペプチド / バクテリオシン / 乳酸菌 / 抗菌タンパク質 / 生合成機構 |
研究実績の概要 |
これまでに、特徴的な構造と活性をもつ多種多様な新奇乳酸菌バクテリオシンを見出し、これらの新しい生合成・作用機構の解析を進めてきた。本研究では、特異な構造と活性をもつ乳酸菌バクテリオシンをさらに探索するとともに、種々の新奇乳酸菌バクテリオシンの生合成・作用機構を明らかにし、それらの実用と生合成・作用機構を利用した新奇抗菌ペプチドの創出に向けた分子基盤の確立を目指している。 新たに分離した乳酸菌からバクテリオシン活性を見出し、バクテリオシンの精製・構造解析および特性の解析を行った。さらに、バクテリオシン生産乳酸菌のドラフトゲノム解析を行い、バクテリオシンの構造決定および生合成遺伝子群の特定・解析を行った。その結果、クラスIIおよびクラスIIIに分類される複数の新奇バクテリオシンの構造を決定した。ドラフトゲノム解析によって、一部の乳酸菌分離株からは、精製・構造解析で得られたものに加えて複数のバクテリオシン様遺伝子が見出され、その生産や活性についてさらに解析を進めている。クラスIIIバクテリオシンについては、これまでの数例と同様の基本構造を有しながらも異なる抗菌スペクトルを示すものが見出された。また、大腸菌による異種発現によって、クラスIIIバクテリオシンは効率よく取得できることが明らかとなり、その抗菌作用等の特性解析を進めている。 一方、環状バクテリオシン・ロイコサイクリシンQについて、生合成タンパク質の部位特異的変異によって、分泌や自己耐性に関わるタンパク質の特性を明らかにした。リーダーレスバクテリオシンについては、ラクティシンQ生合成遺伝子群が大腸菌を宿主とした場合にも機能することが明らかとなった。また、バクテリオシントランスポーター間の比較解析が進展し、我々が見出した多成分バクテリオシントランスポーターEnkTは異種バクテリオシンの分泌発現に有利な特性をもつことが実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き、新しい構造をもつ乳酸菌バクテリオシンが得られた。さらにドラフトゲノム解析によっても、バクテリオシン様のペプチド・タンパク質をコードする遺伝子が見出された。クラスIIIバクテリオシンについては、他のクラスのバクテリオシンとは異なり、大腸菌発現によって活性を持つものが得られることが明らかとなり、抗菌活性等の特性の解析を効率よく行うことが可能となった。環状バクテリオシンやリーダーレスバクテリオシンについては、特定された生合成必須遺伝子群の異種発現により、生合成遺伝子群の機能解析が進展している。多成分バクテリオシントランスポーターについても、機能部位の比較解析が進展した。 以上のように、種々のバクテリオシンの構造や生合成・作用機構について、研究はおおむね順調に進展しており、今後の新奇バクテリオシン群の実用と生合成機構を利用した新奇抗菌ペプチドの創出に向けた重要な成果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進展しており、多様な新奇バクテリオシンが得られたが、構造や活性に特徴を持つバクテリオシンについて優先的に研究を進める。とくに、リーダーレスバクテリオシンと環状バクテリオシンの生合成・作用機構について、各バクテリオシン間の共通点に着目しながら、成熟化機構、分泌機構、自己耐性機構の解明を図る。また、分離株のドラフトゲノム解析やデータベース上に見出されるバクテリオシン様配列について、構築した異種バクテリオシン分泌発現系等も活用しながら、その抗菌活性や作用機構の解析を進める。リーダーレスバクテリオシンの大腸菌発現系については、その特性を把握し、高効率化を図る。抗菌タンパク質であるクラスIIIバクテリオシンについては、構築した大腸菌発現系を活用してその抗菌活性の特性、とくに抗菌スペクトルの特異性や作用機構について検討を進める。 以上の内容を中心に、多種多様なバクテリオシンとその生合成遺伝子群を利用できる優位性を活用し、新奇バクテリオシン群の実用と生合成機構を利用した新奇抗菌ペプチドの創出に向けた分子基盤の構築を図る。
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