本研究では、これまでに見出した特異な構造と活性をもつ種々の乳酸菌バクテリオシンについて、生合成・作用機構を明らかにし、それらの実用と生合成・作用機構を利用した新奇抗菌ペプチドの創出に向けた分子基盤の確立を目指している。 前年度に引き続き、新たに分離した乳酸菌が生産するバクテリオシンの精製・構造解析および特性の解析、およびバクテリオシン生産乳酸菌のドラフトゲノム解析を行い、バクテリオシンの構造決定、生合成遺伝子群の特定・解析を行った。その結果、クラスIIに分類される複数の新奇バクテリオシンの構造を決定したほか、クラスIバクテリオシンの生産への関与が予想される遺伝子群を見出した。また、バクテリオシンの抗菌スペクトルの改変や拡張に向けて、他の生物種からも抗菌ペプチドの配列を取得することができた。 前年度までに大腸菌発現系を構築し、抗菌作用を解析したクラスIIIバクテリオシンについては、さらに各機能ドメインごとの発現と解析を行い、それらの機能や抗菌活性への寄与が明らかとなった。また、環状バクテリオシン・ロイコサイクリシンQやラクトサイクリシンQについて、異種発現によって生合成遺伝子群の比較解析を行い、各相同遺伝子が両環状バクテリオシンの生合成機構において同様の機能をもつことが推察された。リーダーレスバクテリオシン・ラクティシンQの生合成遺伝子群は大腸菌を宿主とした場合にも機能することが明らかとなっていたが、さらにその機能の特性を評価し、効率的な分泌発現を実現する条件を設定することができた。さらに、多成分バクテリオシントランスポーターEnkTも大腸菌で機能する可能性が見出され、今後の異種バクテリオシンや改変バクテリオシンの効率的な創出や生産系の構築に向けた重要な成果を得ることができた。
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