研究課題/領域番号 |
21H02112
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
藤原 伸介 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (90263219)
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研究分担者 |
福田 青郎 関西学院大学, 生命環境学部, 講師 (30421283)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポリアミン / アーキア / 超好熱菌 |
研究実績の概要 |
Thermococcus kodakarensis細胞からポリアミンのアセチル化と脱アセチル化に関与する酵素の精製を試みた。今回、脱アセチル化活性画分を濃縮し、活性画分に含まれるタンパク質(29 kDa)を質量分析(LC-MS)で決定し、遺伝子の特定を試みた。特定された遺伝子(TK1417)をクローン化し、大腸菌で組換え体として取得した。しかし精製した分子に酵素活性はなく、TK1417が目的の遺伝子ではないことが判明した。活性画分の分画から再度試みる予定である。BCPAで翻訳が促進されるhyhL遺伝子について、その制御領域を特定するために in vitroの翻訳実験を行なった。BCPA合成能欠損変異株DBP1から翻訳に必要なS30画分を取得した。鋳型DNAとして様々な5'UTR領域を含むhyhLのmRNAをT7ポリメラーゼを用いて合成し、in vitro翻訳実験に供した。その結果、hyhL遺伝子翻訳にはBCPAが必須であり、依存性を示すのに必要な領域はhyhL遺伝子領域内にあることが示唆された。そこで5'UTR領域を、発現にBCPA依存性がないグルタミン酸脱水素酵素の遺伝子のものと交換して検証したところ、BCPAの依存性が確認された。今後、hyhL構造遺伝子内での制御領域の特定を行う。BCPAをナノ粒子に固定化したBCPA-CQDを作成し、様々な微生物に対する抗菌活性を評価した。大腸菌、枯草菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性が示された。特に黄色ブドウ球菌に対する抗菌性が顕著であり、薬剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しても高い生育抑制が認められた。抗菌スペクトルについてはさらに詳細な解析を要する。また、CQD以外の粒子にBCPAを固定化し、抗菌性を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で研究室での実験活動が十分に行えなかったことが最大の要因である。人数制限や時間制限のかかる状況下で、従事者が作業中断を余儀なくされた。半導体不足の影響で、故障した実験機器の修理が行われなかったことも作業効率を低下させた。今回、脱アセチル化酵素の特定に至らなかったことを踏まえ、精製方法を変更し、再度試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
BCPAに依存してmRNA量とタンパク質量が変動する遺伝子に関しての解析を継続する。翻訳段階でのみ制御が見られるヒドロゲナーゼ遺伝子hyhLについて、制御領域の特定をおこなう。また、今年度、一部の転写因子にもBCPA依存性が確認された。この因子の発現におけるBCPA依存性を in vitro 発現系を用いて検証する。 今年度にBCPAとそのアセチル体(AcBCPA)の変換を触媒する酵素の精製を試みたが、目的の酵素活性が確認されなかった。2022年度はクロマトグラフィーの手順を変え精製を再度試みる。質量分析、またはアミノ末端配列を決定することで、遺伝子の特定を行う。この遺伝子を大腸菌で発現させ、組換え体として精製し、酵素の基質特異性、温度依存性、速度論的解析を行う。 T.kodakarensisのBCPA合成酵素遺伝子(Tk-bpsA)をPyrobaculum calidifontis 由来の長鎖ポリアミン合成酵素(LCPA)遺伝子(Pc-speE)と置き換えた変異株の生育特性を親株と比較する。LCPAのどの部分が、BCPAの機能相補に関与するかを明確にするため、hyhL遺伝子をモデルにin vitroの翻訳実験を行い、それぞれのポリアミンの作用特性を考察する。また天然型のPc-SpeEを精製し、その触媒機構を解析する。 スペルミジンを固定化したナノ粒子(spermidine-carbon quantum dots,SPD-CQD)には抗菌活性があるが、BCPAは機能するアミノ基が多く、高い効果が期待される。そこでBCPAを固定化したナノ粒子(BCPA-CQD)を合成し、スペルミジンナノ粒子(SPD-CQD)と抗菌活性を比較する。抗菌性は一般的指標菌(Micrococcus luteusなど)を用いる。
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