研究課題/領域番号 |
21H02114
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮川 拓也 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (50596559)
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研究分担者 |
中野 雄司 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (30281653)
光田 展隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 副研究部門長 (80450667)
野崎 翔平 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20850910)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 植物 / ブラシノステロイド / 転写調節 / 転写因子間相互作用 |
研究実績の概要 |
ブラシノステロイド(BR)は植物の多岐にわたる成長過程を総じて促進的に調節する植物ホルモンである。BRの生理作用に必要な遺伝子セットの発現調節を担うマスター転写因子BIL1/BZR1がBR応答性遺伝子のプロモーター上の塩基配列に結合し、その転写を制御する分子実態はまだ十分に理解されていない。本研究により、BIL1/BZR1のDAP-seqデータとDNAマイクロアレイデータの統合解析に基づき、BIL1/BZR1が単独で結合可能なNN-BRRE-core配列をプロモーター上にもつ遺伝子は転写が抑制され、この配列への親和性がさらに外側の核酸塩基の種類に大きく影響を受けることが示された。そこで本年度は、この外側の核酸塩基の影響を定量的に評価した。さらに、BIL1/BZR1と各種DNAとの複合体構造から、NN-BRRE-core配列に対する結合親和性の調節に必要なDNAの形状読み取り機構に寄与するアミノ酸残基を検討し、プロトプラストを用いた一過性発現レポーターアッセイ等により、DNA主鎖リン酸基との相互作用ネットワーク形成に関わる2つのアミノ酸残基がこの機構において重要であることを特定した。以上の成果より、BIL1/BZR1による直接的なBR応答遺伝子の発現誘導では、BIL1/BZR1単独での比較的弱い結合、延いては他の転写因子や共役因子との協働等によりBIL1/BZR1をプロモーター上に誘引する仕組みが存在する可能性が考察された。本研究ではまた、BIL1/BZR1と他の転写因子のDAP-seqデータから選定した複数の転写因子に着目し、酵母ツーハイブリッド法等による相互作用解析を行い、BIL1/BZR1と相互作用する複数の転写因子が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BIL1/BZR1がNN-BRRE-core配列を直接識別するにもかかわらず、実際にはその中から、より選択的にプロモーター上の結合位置を決定し、BR応答性遺伝子の発現を抑制するという、新しい仕組みを突き詰め、成果の公表に至った(Nosaki et al., Nat Plants, 2022)。また、他の転写因子との協調的な作用を解析するための複数の候補遺伝子の同定が進んでいる。その一方、転写因子間の協調的なDNA配列認識の解析については、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
BIL1/BZR1と他の転写因子の協調的なDNA配列認識とBR応答性遺伝子の転写制御機構を解析するため、BIL1/BZR1-標的転写因子複合体を用いたDAP-seqデータの取得を引き続き検討する。また、BIL1/BZR1と相互作用することが見出された候補転写因子について、相互作用領域の特定を進める。これらの転写因子(または相互作用領域)を新たに追加してDAP-seq解析を検討し、BIL1/BZR1と候補転写因子が協調的もしくは競合的に作用する結合サイトとその配列パターンの解析を行う。
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