研究実績の概要 |
本研究課題では、新規脱水酵素であるAgm6の基質認識の寛容性を拡大することを目指した。そこで、Agm6の立体構造モデルを元にした考察により、adenosineアナログへの基質認識を拡大させることを目的とした変異5種を検討し、T61AとT61S変異を発見した。特にT61A変異について注目した酵素活性評価実験により、2-chloroadenosineへの活性向上および2-bromoadenosineへの新規基質認識を確認し、酵素生成化合物を単離して、NMR解析によってその構造を決定した。一方で2-fluoroadenosineへの活性向上については期待された効果は検出できなかった。 さらには、T61A変異による活性向上から、2-fluoroadenosine, 2-chloroadenosineを基質とした時の生成物である4’,5’-dehydro-5’-deoxy-2-fluoroadenosine, 4’,5’-dehydro-5’-deoxy-2-chloroadenosineについて、十分量の単離が可能になった。そこで、今後の目標として、これを用いた生物活性の評価に期待したい。また、これらの構造的特徴であるexo-Glycal環構造の反応性に注目し、5’位炭素への更なる伸長反応を起こすことも新規性の高い研究として期待できる。ハロゲン化させたexo-Glycal環化合物とボロン酸を鈴木カップリング反応させることで、exo-Glycal環構造の炭素二重結合を元に炭素鎖が伸長した化合物の生成が報告されており、4’,5’-dehydro-5’-deoxy-2-fluoroadenosine誘導体や, 4’,5’-dehydro-5’-deoxy-2-chloroadenosine誘導体の酵素-化学合成も期待される。adenosineアナログであるという構造的特徴に加えて、更なる伸長反応を進めることで、より多様な構造を持った核酸アナログの創出も今後の展開として期待できる。
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