研究課題/領域番号 |
21H02129
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
片岡 宏誌 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60202008)
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研究分担者 |
永田 晋治 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40345179)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | コレステロール / 植物ステロール / エクジソン / エクジステロイド / ペプチド |
研究実績の概要 |
2021年度において本課題の目的で分類している(1)から(3)に従って、2021年度の研究実績を以下に記す。 1)植物ステロールからコレステロールに変換する酵素群はSbovodaにより提唱されているが、その実態の再現が難しい。ただし、放射性同位体の植物ステロール(β-シトステロール)を用いると、コレステロールに変換されることは確認できた。ただし、試験管内での反応効率が予想通り著しく低かった。本研究の目的は、酵素反応効率の向上は酵素同定に必要ではあるが、酵素を同定するために実験が停滞してるため、効率よりも同定を進めることとした。この反応は、カイコの腸管のミクロソーム画分に現れ、超遠心分離により、その活性が小胞体の画分とミトコンドリアの画分に現れることが分かった。精製するために、超遠心分離を用いるかどうかは操作の繁雑性から懐疑的だが、これにより酵素活性が少しでも濃縮できたため、酵素同定に期待ができる状態となった。 2)休眠および非休眠状態の卵を用いてリン酸抱合体のエクジステロイドが出ることがわかっているが、その定量的な解析をLC-MS/MSで行う予定であった。イオンピークから帰属できるものはあったものの、その測定条件などさらに検討する必要があることが分かった。それと同時にLCMSMSが故障し測定分析が滞った。 3)昆虫のステロイドホルモンとステロール化合物は制御メカニズムを考えた時、非常に密接な関係があることが先行研究からも分かる。一方で、現在ステロイドの定量系で利用してきたLCMSMSが使えない状態であったため、GCMSの利用を検討している。また、各種ホルモンによる昆虫体内への影響を検討するため、カイコの他にフタホシコオロも用いることにしており、この種のペプチドホルモンの構造に関しては2021年度で網羅的に同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度において本課題の目的で分類している(1)から(3)に従って、2021年度の研究実績を以下に記す。 1)ステロールの分析系が本研究課題の肝となる。しかし、故障修理が相次ぎ分析が思うように進まなかった。一方で、GCMSを利用することにより感度は高くないものの、研究課題を進ませることができるようになった。 2)1)と同様で、LCMSMSが故障し測定分析が滞ったため、思うように研究計画がはかどらなかった。一方、標識植物ステロールを用いた取り込み実験では、GCMSを用いてトレースしたところ、コレステロールへの変換が認められたため、今後酵素同定に向けた実験ができると思われた。 3)カイコを用いた研究は、LCMSMSの故障により停滞した。一方で、非モデル昆虫種であるフタホシコオロギを用いた研究計画を進める上では、網羅的な転写物解析およびゲノム解析からコオロギの含まれている全ペプチドホルモンを同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の主軸となっているステロール化合物の微量分析系に関しては、22年度に修理する予定であった。実際に修理した22年度にはさらに窒素発生装置が故障していることが分かり、そちらも修繕して23年度初旬には分析が可能になる予定である。今後さらに進めていく予定である。 また、ステロール化合物の代謝、および変換修飾活性を追究する上では、23年度の時点では、LCMSMSおよびGCMSともに使えるようになったため、安定同位体標識化合物を用いた実験はGCMSを、他の微量分析にはLCMSMSを用いる、といったように使い分けながら研究を進めることとする。 一方で、休眠に関する研究としてカイコやフタホシコオロギに関しては、ともにエクジソンの上位のホルモンと考えられるペプチド性因子が既に網羅的に入手できているので、23年度には精力的に進めていくこととする。
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