研究課題
まず、様々な文献より、DNAヒドロキシメチル化に関する技術を比較検証し、実施可能な手法として、以下を選択した。DNAヒドロキシメチル化に影響を与えているか否かを調べるためには、まずグローバルDNAヒドロキシメチル化率の分析手法を確立した。本研究では、特にDNAメチル化率測定のゴールドスタンダードとして認知されている、HPLCを用いた分析を採用した。移動相には酢酸アンモニウム緩衝液(pH 4.1)とメタノールを用い、グラジエント解析を行った。カラムはYMC社Hydrosphere C18を用い、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)である島津社NexceraX2を用いて解析した。その結果、4種のヌクレオシドに加え、5-メチル化シトシンと5-ヒドロキシメチル化シトシンを分離定量することが可能であることを確認した。サンプル処理では、動物もしくは細胞から抽出したゲノムDNAをZymo社DNA Degradase plusを用いヌクレオシドに分解し、その後分析に供することで定量可能であることが確認された。ラットの肝臓や腎臓、さらにHepG2といった細胞において、ヒドロキシメチルシトシン/メチルシトシン比は非常に低いことが明らかとなった。個別の位置のヒドロキシメチル化シトシンの解析についても検討を進め、定量可能であることを確認した。また、メチル化と脱メチル化に関わる酵素(各種DNMTやTet)の遺伝子発現について、栄養条件への応答が様々であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
初年度の目標であったDNA中のシトシンのメチル化およびヒドロキシメチル化について、グローバルおよび位置特異的なものについて、解析方法の検討を完了することができた。特にグローバルなものに関しては、少なくともラットの腎臓や肝臓においてはヒドロキシメチル化の割合が非常に低いことも明らかとすることができ、今後の解析に有用な知見を得ることができた。研究協力者の一人であった大学院生がコロナ禍で一部十分に参加できなかったが、他の研究体制は順調に推移したのでそれをカバーすることができた。
妊娠中低タンパク質摂取による仔の食塩感受性増強に着目し、SHRSPラットを交配させ、母親に妊娠期間中低タンパク質食(9%カゼイン食)もしくは対照食(20%カゼイン食)を摂取させて、出生後5日、10日、および28日目の腎臓DNAを取得している。これらのDNAに関してグローバルなメチル化およびヒドロキシメチル化、位置特異的なメチル化およびヒドロキシメチル化の解析を進める。次に同様の条件で出生したSHRSPの仔ラットにおいて、離乳直後から2週間低タンパク質食(9%カゼイン食)、対照食(20%カゼイン食)、高タンパク質食(40%カゼイン食)を給餌した群を用いて、腎臓のDNAのエピジェネティックな状態を上記と同様に解析する。また、胎児期のタンパク質栄養にこだわらず、そもそも栄養によって特定の遺伝子近傍のヒドロキシメチル化/メチル化が変化する現象が観察できるかにも注目し、成長中の正常ラットにおいてタンパク質やエネルギー摂取量を変化させ、従来報告されているメチル化により制御されるとされる代謝上重要な遺伝子に着目した解析を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Foods
巻: 11 ページ: 753
10.3390/foods11050753
Food Sci. Nutr.
巻: 9 ページ: 1452-1459
10.1002/fsn3.2113