研究課題/領域番号 |
21H02136
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 久典 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (40211164)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エピゲノム / DNAメチル化 / ヒドロキシメチル化 / タンパク質栄養 / 胎児期 / 高血圧 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究で、脳卒中易発症性食塩感受性高血圧モデルラットにおいて、妊娠中に低タンパク質食を摂取させた母ラットから生まれた子 は高血圧が憎悪すること、またそれにはプロスタグランジン受容体などの遺伝子のメチル化の変化が関与していることを明らかにしている。さ らに妊娠中低タンパク質群の子ラットに、離乳後から様々な量のタンパク質の餌を摂食させることにより、こうしたDNAメチル化の変化が緩和されたり増悪されたりすることを報告した。ゲノム全体としてのDNAメチル化、ヒドロキシメチル化の割合は貝絵咳を行ったところ、ラット肝臓や腎臓における ヒドロキシメチルシトシンの割合は非常に低いことを見出し、供試サンプル量など条件をさらに改良する必要があることがわかった。Ptger1やAT2Rなどの遺伝子について、すでに取得している母親低タンパク質摂取の子の腎臓DNAを用いてヒドロキシメチル化の解析を行うために、様々な方法の比較検討を行った。特定の遺伝子領域のメチル化・ヒドロキシメチル化の解析を行う方法のうち、TAB-Seq法やEnIGMA法などについて、得られる結果の精度や簡便性について比較を行ったところ、EnIGMA法を用いることが適当であるという結論が得られた。一方これらの解析の中で、正常マウスに妊娠中低タンパク質食を摂取させた子において、高脂肪食を与えたところ、妊娠中正常タンパク質群に比べて白色脂肪組織重量の優位な増加や、肝臓中の5種の遊離アミノ酸の増加も見られ、妊娠中低タンパク質食が肝臓の代謝を変動させることも示唆される結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表者は2022年度末に所属が変わり研究が一時的に停止したため、特定の遺伝子のメチル化解析の着手に若干の遅れが生じたが、現在は研究環境が整ったため、年度末までには予定の実験項目を完了できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
まず生後に低タンパク質食を摂取させた条件において、腎臓や肝臓におけるメチル化・ヒドロキシメチル化の検討を行い、タンパク質栄養はメチル化シトシンの水酸化にどの程度の影響を及ぼすかを明らかにする。影響が極めて小さい場合は、葉酸やメチオニンの欠乏など、エピゲノムレベルでの影響がより強いと考えられる条件により、栄養と動物のエピゲノムの関係を広く明らかにする。これまでに着目してきたPtger1やATR2などの遺伝子について、すでに取得している母親低タンパク質摂取の子の腎臓DNAを用いてEnIGMA法によるヒドロキシメチル化の解析を行う。最後に、妊娠中低タン パク質摂取の子に対して離乳後に各レベルのタンパク質を含む餌を4週間摂取させたラットの腎臓DNAサンプル(取得済み)を用いて、同様の解析を行い、血圧に関連する遺伝子のメチル化/ヒドロキシ状態のリセットや増強の様相について解析を行う。これらの検討により、栄養特にタンパク質栄養、さらには妊娠期の栄養が長期間においてどのような影響を及ぼし得るかについての情報を得る。
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