研究課題/領域番号 |
21H02143
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
生城 真一 富山県立大学, 工学部, 教授 (50244679)
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研究分担者 |
栗原 新 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (20630966)
西川 美宇 富山県立大学, 工学部, 助教 (90749805)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポリフェノール動態 |
研究実績の概要 |
食品中の機能性成分であるフラボノイドなどはグルクロン酸や硫酸基が付加された抱合代謝物として生体内に留まり、一部は脱抱合過程を通して活性体(アグリコン)に変換される。従って、体内における抱合代謝物への変換、輸送及び排泄過程がフラボノイドの生理機能発現を規定する。近年では宿主腸内細菌叢における脱抱合による再吸収過程を通して代謝物の体内動態に関与する可能性が示唆される。本申請では、(課題1)生体に取り込まれた機能性成分の代謝物を同定するために、異物代謝酵素発現酵母を用いた代謝物の網羅的な合成プラットフォームを確立する。さらに、課題1で得られた代謝物標準品を用いて、(課題2)腸内常在細菌優勢種における脱抱合能評価により機能性成分動態に対する腸肝循環の寄与を明らかにすることにより、生体における腸内細菌叢が関与する食品中機能性成分の抱合代謝物動態の総合的理解を通して食品中の機能性成分の真の作用メカニズム解明を目指した。ケルセチンのヘテロ抱合体合成においては、ヒト由来異物代謝酵素(UDP-グルクロン酸転移酵素および硫酸転移酵素)発現酵母株を用いた。出発基質としてグルクロン酸抱合あるいは硫酸抱合化ケルセチンを異なる抱合酵素を発現する酵母菌体に添加し、最適条件下において抱合変換を行った。また、メチル化ケルセチンであるイソラムネチンのヘテロ抱合体についても同様に合成した。以下に示すように4種のケルセチンヘテロ抱合体および3種のイソラムネチンヘテロ抱合体を調製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、ケルセチン、レスベラトロールおよびピセアタンノールについて、抱合酵素発現酵母菌体を用いて部位特異的な修飾を受けた抱合代謝物を効率的に合成することに成功している。さらに反応条件の検討によりケルセチン抱合代謝物を用いて異なる抱合基を有するヘテロ抱合体の合成にも成功しておりラット体内における新規代謝物として検出にも貢献している。腸内細菌による脱抱合能の解析については、ケルセチン(4種)、ピセアタンノール(3種)抱合体を基質としてヒト腸内常在細菌優勢種63種について解析を行った。基質あるいは抱合化部位依存的に脱抱合能が異なることが示され、腸内細菌叢の違いによりポリフェノール動態が異なることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の本研究課題については引き続き、生体に取り込まれた機能性成分の代謝物を同定するために、異物代謝酵素発現酵母を用いた代謝物の網羅的な合成プラットフォームを確立する。さらに、課題1で得られた代謝物標準品を用いて、(課題2)腸内常在細菌優勢種における脱抱合能評価により機能性成分動態に対する腸肝循環の寄与を明らかにすることにより、生体における腸内細菌叢が関与する食品中機能性成分の抱合代謝物動態の総合的理解を通して食品中の機能性成分の真の作用メカニズム解明を目指す。とくに動物試験により腸内細菌がポリフェノール動態に及ぼす影響を評価するために、抗生物質投与ラットにおけるケルセチン代謝についてin vivo および ex vivoレベルでの解析を行う予定である。
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