研究課題
本年度は、これまでにマウスモデルにおいて確立してきた高脂肪食による難聴予防効果を利用し、その時刻依存性について検討を行った。1日2回(活動初期と後期;以下、朝・夕と表現)の時間帯に各4時間の食事時間枠を設ける時間制限給餌を行い、コントロール食と高脂肪について、朝・夕ともに与える群と、朝のみ高脂肪食、あるいは、夕のみ高脂肪食を与える群を設定し、難聴進行度を測定した。これまでの結果と合うように、朝・夕ともに高脂肪食を与えた群は、朝・夕ともにコントロール食を与えた群よりも難聴の進行が有意に抑制された。朝のみ、あるいは、夕のみに高脂肪食を与えた群についても、朝・夕ともに高脂肪食を与えた群と近いレベルで難聴の進行を抑制した。このことから、高脂肪食による難聴予防効果は、朝摂取でも夕摂取でも優位に現れることが明らかとなった。また、内耳の遺伝子発現解析から、難聴の進行と関連の深い遺伝子の情報が得られた。現在、難聴予防メカニズムとして腸内細菌叢の変化が大きく影響しているという仮説のもと、追加解析を進めている。また、摂餌量については、高脂肪食を朝か夕のどちらかに与えた群は、給餌時刻によらず、コントロール食よりも高脂肪食を多く摂餌していた。すなわち、朝に高脂肪食を与えた群は朝食を多く摂取し、夕に高脂肪食を与えた群は夕食を多く摂取していた。興味深いことに、これらの2群の摂餌量の合計に有意な差はなかったが、夕に高脂肪食を与えた群は、朝・夕ともに高脂肪食を与えた群と同等に体重が増加した(肥満傾向になった)のに対し、朝に高脂肪食を与えた群はこれら2群よりも有意に体重の増加が抑制された。このことから、朝・夕の時間枠のみを設けた自由摂食条件下において、高脂肪食の朝摂取は、夕摂取と比較して肥満誘導効果が小さいことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
難聴抑制と関連する遺伝子発現情報が得られてきたことから、メカニズムや時刻依存性の解明に向けたアプローチが可能になりつつあるため。
動物モデル(マウス)から得られた関連遺伝子について、培養細胞を用いた時刻依存性モデルに落とし込んでいくことで研究を加速していく。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 86 ページ: 1085~1094
10.1093/bbb/zbac092