研究実績の概要 |
本研究代表らは構築したモデル糸状菌アカパンカビのウイルス感染系(Honda et al, Nature Comm, 2020)を用いて、宿主がウイルス感染に対して過剰に免疫応答することで、病気になることを発見した。本研究の目的は、この免疫暴走化に関わる「ウイルス認識機構とその下流因子」、免疫暴走の鍵となる「病的原因遺伝子」を同定し、その分子機序を解明することである。 これまでの解析により、アカパンカビのDICERであるDCL-2を欠損させると、免疫暴走化が抑制されて病気から回復することを見出している。この結果から、DCL-2が有するdsRNA結合部位がウイルスのゲノムdsRNAを認識し、下流の免疫暴走の鍵となる「病的原因遺伝子」の転写を活性化すると考えた。そこで、研究計画に沿って種々の機能変異DCL-2を有する形質変換株を作製し、解析を行った。その結果、DCL-2のdsRNA結合部位、及び、DICER活性が免疫暴走化に関与することを確認した。 また、クリ胴枯病菌ではSAGA複合体がウイルス応答遺伝子群の転写活性化に関与していることが報告されていることから(Andika et al, PNAS, 2017)、SAGA複合体を介する転写活性化と免疫暴走化の関係を調査した。その結果、DCL-2欠損と同様に、SAGA複合体の構成因子を欠損させると、免疫暴走化が抑制されることから、アカパンカビとクリ胴枯病菌に共通するウイルス応答機構の存在が示唆された。
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