研究課題/領域番号 |
21H02154
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
幸田 尚 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60211893)
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研究分担者 |
志浦 寛相 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (10451907)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヒドロキシメチルシトシン / メチルシトシン / エピゲノム解析 |
研究実績の概要 |
我々はメチルシトシン(mC)の脱メチル化反応に関わることが明らかになったヒドロキシメチルシトシン(hmC)を、mCや非修飾のシトシン(C)と同時に高精度に解析する独自の手法をEnIGMA法と名付け、開発を行ってきた。本研究ではこの手法の解析精度を高めた上でゲノムワイド解析にも耐えられるよう改良する。これに加えてこれまでは片鎖ずつしか解析できなかった手法を、DNAの2本鎖を同時に解析が可能になるよう改良を行い、あまり考慮されてこなかった「ヘミ修飾」も含め、シトシン修飾の生物学的意味を明らかにすることを目指している。 すでに我々が開発してきたEnIGMA法では哺乳類のDNAメチル化酵素であるDNMT1の持つ基質特異性を用いてmC、hmCおよびCを同時に解析することを可能とした。それぞれのシトシンの修飾状態に対してその解析精度は95%程度と他のhmC解析技術と同程度の精度で修飾状態を同定できることが示されている。 初年度においてはmC、hmCを持つ合成DNAをモデル基質として作成し、新たに考案した酵素反応の組み合わせによってmC、hmCおよびCの同定が可能であることを確認した。また、種々の反応条件の至適化を開始し、十分に高い精度での解析が可能となるよう実験条件の設定を試みるとともに、実際にマウスのゲノムを用いても同様に解析が可能であるか、EnIGMA ver.1とver.2とを比較しながら検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで開発したEnIGMA法(ver.1)から、解析精度をさらに上げてゲノムワイドの解析にも十分に適用できるように新しく考案した酵素反応の組み合わせによってmC、hmCおよび非修飾のシトシンの同時同定が可能であることを、mC、hmCを持つ合成DNAをモデル基質として作成し、実際に予測通りに可能であることを確認することができた。そこでこの手法をEnIGMA ver.2としてさらに種々の反応条件を至適化するため、条件検討を行い同定の精度向上を試みている。同時に、合成DNAを用いたモデル基質だけではなく、実際にマウスのゲノムを用いても同様に解析が可能であるか、マウスES細胞のゲノムを用いてhmCのレベルが高いことが明らかとなっているArhgap27遺伝子やNhlrc1遺伝子などの領域についてEnIGMA ver.1と比較しながら検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目においては解析の精度をオリジナルのEnIGMA法と比較しながら個々の酵素反応の至適化を行うことで、解析精度を99%程度まで向上させ、EnIGMA ver.2として確立する。また、EnIGMA ver.2についてもゲノムワイド解析にも適用できるよう技術の確立を行う。さらに、次世代シーケンサーを用いた解析によって出力されるデータから、シトシンの修飾状態を同定する解析用のパイプラインの構築も行う。EnIGMA ver.2の期待されるメリットは前述のように解析精度の向上に加えて、オリジナルのEnIGMA法がCpGのシトシンしか解析できないという制約があったのに対して、全てのシトシンについてmC、hmC、Cを同定することが可能となることが期待される。 また、EnIGMA ver.2の確立後、今年度のうちに両鎖の解析を同時に行うことができるEnIGMA ver.3の開発に向けて、条件検討を開始する。
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