研究課題/領域番号 |
21H02171
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢守 航 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (90638363)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光合成 / Rubisco / Rubisco activase / 生産性 / 高温 |
研究実績の概要 |
野外環境において植物の受ける光強度は、天候の変化や植物体同士の相互被陰によって、一日を通して常に変動している。気候変化が食料生産や炭素循環に及ぼす影響を明らかにするためには、実際の圃場に近い環境での実験が必要である。そこで本申請研究では、光合成系の機能強化を通して、近未来に予想される高CO2・高温環境下において、イネの光合成能力の改善を目指す。 これまでの研究によって、光合成の鍵酵素であるRubiscoは弱光を含む様々な環境で不活性化し、その後、光が突然あたってもすぐに活性が増加しないこと、そして、不活性化したRubiscoを再活性化するRubisco activaseの量を減少させた形質転換体イネでは、光合成誘導時間が著しく遅延することを明らかにしてきた。また、Rubisco activase過剰発現体とRubisco過剰発現体の二重形質転換体を作製したところ、現在の大気CO2濃度と気温環境において、光合成能力が改善することを明らかにした。また、これらの二重形質転換体において、高温環境における光合成能力を大幅に向上させ、植物体重量を約26%向上させることに成功した。本研究成果によって、地球温暖化に適応した生産性の高いイネを作り出すことに成功したと言える。本研究成果は、Suganami et al. (2021) Plant PhysiologyとQu et al. (2021) Plant, Cell & Environmentで国際誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた実験がおおむね遂行できている。論文化も順調である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、Rubisco activase過剰発現体とRubisco過剰発現体の二重形質転換体において、野外の変動する光環境に対する光合成応答を解析する。また、気孔開閉を迅速化したイネの作出を行い、気孔改変による光合成応答と植物成長量を解析するための準備を行う。
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