研究課題/領域番号 |
21H02175
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山根 浩二 近畿大学, 農学部, 准教授 (50580859)
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研究分担者 |
大井 崇生 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (60752219)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 三次元再構築 / 維管束鞘細胞 / 維管束柔細胞 / 塩ストレス / イネ |
研究実績の概要 |
イネの塩感受性品種の日本晴と耐塩性品種であるPokkaliを用い、3週齢の個体に100 mMのNaClストレスを4日間処理した植物体を用いて電子顕微鏡固定を実施した。それぞれの品種において、対照区と塩処理区のサンプルを用い、150 nm間隔で1500枚程度の連続切片をカバーガラス6~7枚に分けて回収した。この連続切片を用いて、維管束鞘細胞を含む維管束周辺の連続画像を卓上SEM (TM4000, Hitachi)で撮影した。 日本晴とPokkaliの対照区の観察を行ったところ、維管束鞘細胞の中には多数の葉緑体が確認でき、維管束とは逆側の細胞壁に沿って配置されていた。さらに、維管束鞘葉緑体が配置されている部分には葉肉細胞が隣接しておらず、維管束鞘葉緑体の大部分は細胞間隙に面するように配置されていた。そのため、二酸化炭素を積極的に吸収できる配置になっていることが予想された。ミトコンドリアは、維管束鞘葉緑体と膜接触するように配置されるとともに、維管束側の細胞壁にも配置されており、維管束側のアポプラストに物質を搬出するためのエネルギー源になっていることが予想された。 維管束鞘細胞の内側には、一層の柔細胞が確認できた。内部にはチラコイド膜を有する色素体やミトコンドリアが多数確認できた。この柔細胞において、道管の横に隣接する細胞だけが、他の柔細胞よりも細胞質が密でミトコンドリアが多く存在していた。さらに、道管には二次壁が発達しているが、この密な柔細胞との間だけ、部分的に二次壁の肥厚が見られず、それに対応して柔細胞側の細胞壁も薄くなって壁孔を形成していた。道管と隣接する維管束鞘細胞との間には、これらの構造は見られなかったことから、この密になっている柔細胞が、水や無機塩類の通過に対して重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
卓上SEMを用いた連続切片の観察手法は世界で例が無いため、まずは手法の確立を行った。1500枚程度の連続切片を回収するためには、Histo Jumboのダイヤモンドナイフを用いる必要があるが、100~150 nmの薄い切片を回収するには適さないため、通常のダイヤモンドナイフでの切片作製を試みた。通常のダイヤモンドナイフのボートに合うようにカバーガラスをガラスカッターで割り、ガラスに親水処理を行って回収した。1枚のガラスに200~300枚の切片を回収できたため、それを6~7枚のカバーガラスに分けて回収することで1500枚程度の連続切片を回収できた。 回収した切片を染色する必要があるが、染色についても時間や洗浄方法について検討した。ウラン染色は20分、酢酸鉛は5分の染色で十分であり、通常の透過型電子顕微鏡観察とほぼ同じ時間で対応できた。しかし、しっかりと洗浄しないと染色汚れが激しく綺麗な像は得られなかった。蒸留水の入ったビーカーを6つ用意し、その中でガラスを振って洗浄し、その後、蒸留水を入れたシャーレの中で10分程度インキュベートすることで汚れを完全に落とした。 次に、SEMでの観察にはチャージアップの抑制が重要になるが、カーボンコータ (CADE-E, Meiwafosis)とオスミウムコータ (Neoc-STB, meiwafosis)の両方を試みた。オスミウムコー他を用いた方が薄い皮膜になるため、電子像が綺麗になる傾向があった。しかし、卓上SEMの電子線の強さ等を変えることで、カーボンコータでも十分な解像度が得られることが判明した。 これらの観察手法の確立に時間を要したため、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に取得した対照区の維管束鞘細胞と維管束柔細胞の連続画像を用いてトレースを行い、三次元構造を構築する。構築した三次元像を用いて、細胞やオルガネラを定量評価する。維管束鞘細胞において、葉肉細胞の配置に特徴があったため、細胞壁との接触面積を算出し、二酸化炭素の積極的な吸収を行っているのか、形態的な面から評価していく。さらに、ミトコンドリアが維管束と葉肉細胞側の両方に配置されていたため、数や体積を用いて定量評価し、その役割を推定していく。 維管束柔細胞においても、細胞やオルガネラを三次元構築することで定量評価していく。とくに、道管に隣接した密な細胞とその他の細胞を比較し、内部に含まれるオルガネラの種類やその体積値等を算出し、細胞間の違いを定量的に評価することで役割を推定する。 2022年度は、塩処理区の細胞も観察し、対照区との違いを見いだす。予備的な検討により、日本晴の塩処理区において、維管束鞘細胞内のミトコンドリア数が著しく増加することが観察されているため、ミトコンドリアに着目し、配置や体積値等の変化に着目して観察を行う。さらに、維管束柔細胞においても同様の観察を行う予定である。 さらに、卓上SEMを用いた免疫電子顕微鏡法の確立を目指す。金コロイドの粒子をジアミノベンジジンと塩化金酸を処理することで増幅させ、卓上SEMで観察を行う。本手法を植物細胞で応用した例はなく、さらに、連続切片に免疫処理をして観察した例が無いため、手法を確立する必要がある。まずは、標識が容易なルビスコを用いて条件等を検討していく。その後、本研究の目的タンパク質であるナトリウムの排出に関与する膜タンパク質に応用し、品種間差異や塩処理による膜タンパク質の増減を観察する。
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