ストックは、冬季に加温を必要としない「省エネ花卉」として注目されている。本研究では、遺伝子解析、突然変異、遺伝子組換え技術(ゲノム編集)を組み合わせ、ストックの新しい遺伝資源を作出を行った。 昨年度までのゲノム解析の結果、八重咲き形質に連鎖する遺伝子(八重鑑別関連遺伝子)として、TCP14やPGP9などの遺伝子をピックアップした。遺伝解析の結果、TCP14は一重咲き個体でヘテロ、八重咲き個体でホモであることが確認され、本解析手法が妥当であることが示された。オールダブル品種の育成に関与した種皮色形質を特定するために、プロアントシアニン生合成酵素のうちANSとBAN遺伝子の特定を行った。すべてのオールダブル品種は、ANS変異を有しており、その結果白色種子となっていることを明らかにした。また、プロアントシアニン生合成を制御する転写因子として、種子特異的に発現するMiTT2転写因子遺伝子の同定に成功した。 これまでに得られた形質転換体のうち、MiAG過剰発現体は花冠の縮小を引き起こしたが、八重咲きから一重咲きへの変換は起こらなかった。MiSEP3-SRDX過剰発現体は、貫生花形成により花冠が大きくなる「ポップアップ咲き」という新たな花の形質を生み出した。重イオンビーム照射による突然変異体の中には、花弁細状化変異という、従来の育種では得られなかった形質が出現した。 本研究により、ゲノム解析×形質転換×突然変異を組み合わせることで、新たなストック育種の可能性を示すことができた。
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