重要花き「キク」は、日本の切り花生産量の4割以上を占める重要な花き園芸作物の一つであるにも関わらず、科学的な知見に基づく効率的な品種の開発が遅れている。同質六倍体というゲノムの複雑さがキクの効率的な育種技術の開発を阻んでいる最大の理由である。高次倍数体のゲノムにおけるアレル特異的な転写を引き起こす機構を明らかにし、表現型値を予測できる遺伝モデルの構築を目指すことを目的として本研究を実施した。 キクの連鎖解析集団を栽培し、花や茎などの形質の表現型の年次反復データを取得した。各個体の花や茎などからRNAを抽出し、その配列分析からトランスクリプトームデータを取得した。同時に、各個体の花や茎などのゲノム修飾の状態を調査するエピゲノム解析のための試料を取得した。バイサルファイト法によるDNAのメチル化解析の手法を比較検討し、エピゲノム解析の最適化を行った。この方法により、連鎖解析集団のエピゲノム解析のためのデータを取得した。 同質六倍体であることから遺伝解析が困難であったキクの、品種改良を目指した育種研究や遺伝子の効率的な同定などの遺伝解析の高精度化を図るために、キクのゲノム基盤の整備に着手した。先進ゲノム支援の援助を受けて取得したゲノム配列データに加えて、高精度なロングリード配列データや染色体の立体構造に着目したコンタクト情報を取得し、同質六倍体であるキクの参照ゲノム配列の構築に目処をつけた。
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