研究課題/領域番号 |
21H02191
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
成澤 才彦 茨城大学, 農学部, 教授 (90431650)
|
研究分担者 |
晝間 敬 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20714504)
清水 将文 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60378320)
坂上 伸生 茨城大学, 農学部, 准教授 (00564709)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | エンドファイト / 土着微生物 / 共生 / 土壌病害防除 |
研究実績の概要 |
1. DSE-バクテリア間相互作用の解明と育苗への利用:DSE単独でも植物に病害防除等のストレス耐性を付与することが明らかとなっている。さらに圃場レベルでの実用化を見据え、菌類の特別な栄養要求や走化性を利用して選択的に分離する釣餌法を改変し、DSE菌糸圏に定着する有用バクテリアであるA. pusenseおよびその近縁種の獲得に成功した。 2. DSE -バクテリア共生系の共生および病害抑制機構の解析:Dark Septate Endophyte (DSE) は宿主植物に対し生育促進効果や環境ストレス耐性を付与することが知られており、育苗期にDSEであるVeronaeopsis simplex Y34をのトマトに接種し、地上部乾燥重量を有意に増加させている。本研究での解析の結果、対照区とV. simplex Y34の比較では、230個の発現変動遺伝子が確認され、うち178個はV. simplex Y34接種によって高発現していた。その中には、植物の防御応答に関する遺伝子や硝酸輸送体遺伝子が含まれており、硝酸輸送体遺伝子に関しては、植物の生育促進の大きな要因として示唆された。 3. DSE-バクテリア共生系を利用した圃場での環境微生物叢の制御と病害抑制効果の検討:DSEであるV. simplex Y34を定着させたトマトをハウス内で栽培し、トマト根圏や根内、また周辺土壌の微生物叢の時空間的変化を解析した。菌類叢は処理区・対照区間で大きく分かれており、V. simplex Y34が優占することによる影響が大きく示された。しかしその影響は時間経過とともに小さくなり、両区の菌類叢の類似度が増していった。一方、細菌叢はハウス土壌・根部・根圏土壌といった試料間差が大きく、処理区・対照区間の差は小さかった。また、時間が経過しても異なる試料間の微生物叢の類似度は変化しなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. DSE-バクテリア間相互作用の解明と育苗への利用においては、DSE菌糸圏に定着する有用バクテリアであるA. pusenseおよびその近縁種の獲得に成功し、次年度以降への利用を可能とした。また、2. DSE -バクテリア共生系の共生機構の解析では、植物の防御応答に関する遺伝子や硝酸輸送体遺伝子など発現変動遺伝子が確認され、全く未解明であったメカニズム解明への道筋を示すことが出来た。最後に3. DSE-バクテリア共生系を利用した圃場での環境微生物叢の制御に関しても、DSE処理をすることで特に根圏の菌類叢に影響があることが明らかとなる興味深い結果を得ることに成功している。
|
今後の研究の推進方策 |
1に関しては、本年度の結果より、対象のバクテリアがほぼ絞れてきており、これを2および3の試験と連動するように進めていく。また、2および3に関しては、特に病害抑制に関する試験が十分に行えていないので、本年度の成果を活用出来るように進める予定である。
|