研究課題/領域番号 |
21H02200
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
竹内 香純 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (40370663)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 植物保護細菌 / 二次代謝制御 / シグナル物質 / 抗菌性物質 / アミノ酸 / 遺伝子発現制御 / トランスクリプトーム解析 |
研究実績の概要 |
植物の根圏に生息する非病原性Pseudomonas属細菌Pseudomonas protegensは、周囲の病原微生物との競合に強く土壌病害を抑制する特徴を有することから植物保護細菌とよばれる。P. protegensは多様な二次代謝産物を産生しており、このことが自身の根圏における優勢化に寄与する。研究代表者はこれまでに、調節型small RNAを中心とした制御機構による抗菌性物質の産生メカニズムを明らかにし、一次代謝産物がシグナル物質として機能することを見出した。一方、この制御機構とは独立して植物保護能力に影響を及ぼすアミノ酸を同定しており、新規制御機構が存在することが示唆されている。本研究では植物保護細菌の包括的制御の実現に向けて、当該制御機構を明らかにすることを目的とする。 研究代表者はこれまでに各種アミノ酸処理下にて培養したP. protegens のRNA Seq解析のデータを取得している。初年度はそのデータ整備を進め、発現量が亢進する遺伝子、低下する遺伝子に二分し、さらにVenn diagramに基づき、各種アミノ酸処理時に共通して変動する遺伝子、特異的に変動する遺伝子のグループ分けを行った。特に植物保護効果との相関関係が明確であることが判明しているアミノ酸Aの処理時に発現量が低下する遺伝子グループを機能解析の対象とした。 令和4年度はアミノ酸Aの処理時に発現量に差異の見られた遺伝子のうち、植物保護能力への関与が予測されるものとして、鉄キレート剤であるシデロフォアの合成酵素遺伝子が含まれることを明らかにした。合成酵素遺伝子はクラスターを形成しており、関連する遺伝子の発現が一律低下していた。さらに、相同組換えにより主要な遺伝子の欠損変異株を作出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたトランスクリプトーム比較解析および遺伝子の特定のいずれも順調に進めることができた。解析対象となる遺伝子群が多数の遺伝子からなるクラスターを形成しており、主要な遺伝子の特定に時間を要したが、文献等を参考に特定した。当該遺伝子の変異株の作出についても複数系統の取得に成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
シデロフォアの定量法を確立するため、標準物質を用いHPLC解析に供する。検出に適した培養条件および抽出の条件についても検討し、まず野生株の培養上清より抽出を行いHPLC解析に供する。上記において特定した遺伝子の機能を確認するため、取得した欠損変異株についてもシデロフォア生産量を測定し、野生株との比較を行う。また、アミノ酸処理時の生産量の比較も行う。
|