研究実績の概要 |
幼生生殖とは、幼虫または蛹段階で卵巣が発達し、「母幼虫」または「母蛹」が「子幼虫」を産生するという特殊な繁殖様式であり、昆虫では甲虫目で1種とハエ 目タマバエ科の複数種でしか確認されていない。これまで日本国内では、海外産の菌糸由来とみられるきのこ栽培施設内でしか幼生生殖タマバエは確認されてい なかった。本研究により、国内各地の土着きのこ類から幼生生殖性を示す様々なタマバエを発見し、多くの系統についてエノキタケ菌糸を用いた累代飼育に成功した。 これまでのところ、国内にはMycophila属, Heteropeza属、Leptopsyna属など、少なくとも5属のタマバエが生息していることが判明し、国内における分布や季 節発生消長などを調査した(古川ら2023a,b)。 これらに加えて、未だ成虫が得られておらず、属の所属が未解明の種も確認されていることから、日本国 内に多様な幼生生殖タマバエが生息しているという実態が明らかになってきており、今年度も引き続き国内各地での調査を実施した。 2023年度は、得られたタマバエ類の分類学的地位の精査、発育増殖特性の調査、モード転換機構の解明に向けた実験を継続するとともに、2022年度に実施したゲノム解析の結果を踏まえ、RNA seqにより幼生生殖モードと完全変態モードの際の遺伝子発現を比較した。結果の取りまとめが終わったものから順次論文として公表していく予定である。
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