研究課題
小笠原諸島の父島および母島の南根腐病被害拡大地と収束地に設置した調査プロットにおいて、気象データの取得、病害調査、土壌調査を行った。被害拡大地においては、新たな衰弱木、枯死木が確認されたため菌株を収集し確立した。被害収束地においては被害は認められなかった。南根腐病菌のジェネット調査においては、被害拡大地においては近接する複数のプロットで広域に分布するジェネットが見いだされ、限られた感染源から拡大した可能性が示された。土壌貫入計を用いてプロットの土壌深約1mまでの土壌硬度を計測したところ、長谷川式軟らか度(S値)が1.0以下(根系発達に阻害があるとされる)の土壌が、被害拡大地においては土壌深15㎝程度から現れる傾向があった。被害拡大地においては固い土壌層が比較的浅い位置に分布する傾向が見られたことから、根系の発達阻害がおきやすく樹木に水ストレスがかかりやすい可能性が示された。土壌の総合的な特徴を簡便に捉えることが可能とされている近赤外分光分析を実施し、被害拡大地と収束地の表層土壌のスペクトル分析を行った結果、被害拡大地と収束地の土壌はいくつかのグループに分かれ類型化できる可能性が示唆された。母島の収束地プロットにおいては他のグループと比較して炭素含有率が有意に高いことが明らかになった。被害拡大地全体として炭素含有率が低い傾向が示されたことから、炭素含有率が低い場所では被害が拡大しやすい可能性が示唆された。被害拡大地と収束地から得られた菌株の菌糸成長特性については大きな違いは見られなかった。被害拡大地と収束地の代表プロット間の気温については夏季の最高気温が被害拡大地のほうが2度程度高かった。湿度については、冬季及び夏季の最低湿度が被害拡大地のほうが10%程度低かった。被害拡大地のほうが乾燥傾向にあると考えられた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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小笠原研究
巻: 50 ページ: 69ー78
樹木医学研究
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European Journal of Plant Pathology
巻: 168 ページ: 147-166
10.1007/s10658-023-02740-w