研究課題/領域番号 |
21H02229
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
熊谷 朝臣 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50304770)
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研究分担者 |
永井 信 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 主任研究員 (70452167)
市榮 智明 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (80403872)
宮沢 良行 九州大学, キャンパス計画室, 学術推進専門員 (80467943)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 土地利用変化 / 水循環 / 炭素循環 / 東南アジア / プランテーション |
研究実績の概要 |
ボルネオ島では多くの天然林がオイルパーム農園へと転換され、この大規模土地利用変化は現在も継続中である。この大規模・急速な土地利用変化は、大気-植生間の物質交換特性の変化を通じて、局地~広域環境を大きく改変すると考えられる。そのため、天然林とオイルパームそれぞれの、特に樹冠CO2・H2O交換速度(フラックス)の環境応答特性を理解した上で、土地利用変化による大気陸面過程の変化を議論する必要がある。ボルネオ熱帯雨林域の気象条件は、通年でほぼ一定、つまり季節性に乏しい各気象因子、高放射エネルギー、高温多湿、多雨に特徴づけられる。一方、2~7年周期で発生するエルニーニョ・南方振動(ENSO)がこれら各気象因子の年々変動を引き起こす。よって、ボルネオ熱帯雨林域植生の環境応答特性を解明するためには、ENSOの各フェーズ(エルニーニョ・ラニー ニャ)と平常時を含む長期間の連続的なCO2・H2Oフラックス観測を行い、フラックス、気象因子それぞれの時系列データの比較・解析を行わなければならない。これまで、ボルネオ熱帯雨林域だけでなく世界の熱帯雨林域において、そのようなENSOの各フェーズを複数含むような長期フラックス観測が行われた事例は皆無であり、ましてや、土地利用変化との複合的影響の研究は存在しない。そこで、本研究では、ボルネオ熱帯雨林域に成立する天然林とオイルパームのフラックス環境応答特性を導き、両者の相違・共通点を明らかにするために、ボルネオ島北部の天然林を擁する国立公園とオイルパーム農園において、渦相関法フラック ス・気象観測、樹液流計測、土壌環境計測を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染蔓延のため、当初予定していた、マレーシア国内全域でのオイルパーム農園拡大のインパクトに関する研究は不可能となった。しかし、現地カウンターパートの協力もあり、研究の方針転換が上手く行き、これまで長期間に渡ってデータを入手してきた天然林サイトとその近辺のオイルパーム農園の同期データを入手することができ、その比較研究が順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
方針転換により、天然林1サイトとオイルパーム農園1サイトの比較研究となった。その分、より精緻な理論研究に力を割くことができるようになった。具体的には、機構論的モデルと機械学習モデルの両者を適用する、などである。その結果、天然林をオイルパーム農園に土地利用転換した場合、大気-植生間物質交換過程がどのような影響を受けるかについて、当初予定していたよりも遥かに精緻な解析を行う予定である。
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