研究課題
本課題の最終年度となる2023年度は、2年目までに完了した長期の土壌培養実験や土壌理化学性分析で取得したデータの詳細解析を中心に実施した。本解析によって、特に、水分変動増大を模した乾湿サイクル処理による二酸化炭素(CO2)放出増大率の土壌間での変動を予測する土壌理化学性因子として、アルカリ性溶液(ピロリン酸ナトリウム溶液)で選択的に溶解され抽出されるアルミニウムや鉄として測定される土壌中の金属-有機物複合体存在量が示唆された。特に金属-有機物複合体存在量は乾湿サイクル処理によるCO2放出増大率に対し統計的に有意な正の相関を示したことから、有機物を微生物分解から保護してきた金属-有機物複合体が乾湿サイクルによって破壊されたことで、乾湿サイクルを生き残った微生物に分解可能な基質炭素源が増大し、CO2放出増大につながった可能性が示唆された。また、乾湿サイクル処理に伴う微生物バイオマスの減少を示唆するデータも取得できた。乾湿サイクルを伴う水分変動増大に敏感なこれらの土壌理化学性が、水分変動増大環境におけるCO2放出増大や付随して観測された温度依存性(Q10)の低下、そこから示唆されたプライミング効果の発現などと関わっている可能性がある。これまでに得られた成果の一部については、3年目においても国際学会および国内学会で発表したほか、査読付き論文1報を国際専門誌(Frontiers in Forests and Global Change誌)投稿し、7月に受理・掲載され、さらに別の論文1報が国際専門誌において査読中である。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)
Frontiers in Forests and Global Change
巻: 6 ページ: 1228053
10.3389/ffgc.2023.1228053