研究課題/領域番号 |
21H02240
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
内山 憲太郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40501937)
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研究分担者 |
津村 義彦 筑波大学, 生命環境系, 教授 (20353774)
戸丸 信弘 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50241774)
加藤 珠理 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90467217)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気候変動 / 適応遺伝変異 / 空間モデリング / 適応度 / 将来予測 |
研究実績の概要 |
本研究は、気候変動が日本の主要な高木種11種に与える影響をゲノム内の適応度遺伝成分と気候情報の空間モデリングを通して明らかにすることを目的とする。 研究対象種のうち、本年度はミズナラ天然林33集団524個体、アラカシ天然林22集団350個体、モミ天然林19集団295個体について、ddRAD-seqにより、ゲノムワイドなDNA多型情報を取得した。これにより計画していた11種のうち9種についてゲノムワイドなDNA多型情報の取得が終了した。検出されたSNP数は樹種により幅があるが、クオリティフィルタリング実施後の数値で、スギ31676座、ヒノキ8500座、ブナ4329座、ミズナラ27973座、アラカシ33815座、モミ6837座となった。スダジイ、ツブラジイ、タカネザクラはシーケンスは終わっており、現在多型検出中である。 スギとブナについて、DNA多型情報と過去の生物気候変数(bioclimatic variables, World Clim v2)との関連解析を行い、気候環境への適応が予想される遺伝子(適応候補遺伝子セット)を抽出した。そのうちのスギについて、Gradient Forestモデルを用いて、適応候補遺伝子セットと生物気候変数との空間モデリングを行い、適応度遺伝成分の空間分布を明らかにした。その結果、スギでは太平洋側の端および日本海側の全域で適応遺伝成分が大きく変化し、スギではこれらの地域において自然選択が強く働いている可能性が示された。この作成したモデルを用いて、複数のCO2排出シナリオに基づいた将来気候条件下で、適応度遺伝成分がどのように攪乱されるかをgenetic offset(遺伝的脆弱性)として評価した。その結果、九州、四国の一部内陸域および東北地方の一部地域においてgenetic offsetが上昇することが予測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象とする11種のうち、9種においてゲノムワイドなDNA多型情報の取得が終了し、順調に進展している。残す2種はカスミザクラとヤマザクラであるが、サンプルの採取はほぼ終わっており、次年度の早い段階でこれらの種においてもDNA多型情報の取得は終了する予定である。また、Gradient Forestによる将来気候下での脆弱性評価についても、スギにおいて計算が終わり、他の樹種でも同様の解析を行う目途がたった。以上より、データの取得はほぼ終了が見えており、また解析についても順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
対象種である11種のうち、残す2種のサクラ属について、DNA多型情報を取得する。同じサクラ属のタカネザクラにおいて十分な多型情報が得られていることから、残す2種についても同様の手法を用いる予定である。また、既に多型情報の取得が終了している樹種に関しては、順次、適応候補遺伝子セットの抽出ならびに、適応度低下の予測を行う予定である。
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