研究課題/領域番号 |
21H02266
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小池 一彦 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (30265722)
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研究分担者 |
山下 洋 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主任研究員 (00583147)
神保 充 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (10291650)
鈴木 豪 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主任研究員 (30533319)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サンゴ礁 / シャコガイ / 褐虫藻 / 共生 |
研究実績の概要 |
2021年度は前年度に引き続き、石西礁湖において海水中および底質上の褐虫藻の多様性解析を行った。また、サンゴ幼生にシャコガイ糞を添加し、その取り込みの過程を観察した。 石西礁湖において9地点を設け、海水・底質・周辺サンゴの褐虫藻組成を次世代シークエンサーによって解析したところ合計で99万リードが得られ、8属の褐虫藻が検出された。このうち、特にCladocopiumおよびDurusdiniumに関連するリード数が最も多かった。サンゴとしてAcropora selagoを選び、共生する褐虫藻と周辺環境中の組成を比べたところ、両者に共通する褐虫藻系統は、サンゴ被度が高くなるにつれ多くなる傾向が認められた。Cladocopiumの中ではC1とC50がもっとも普遍的に見出された。DurusdiniumではD1とD1aであった。用いたプライマーの特性上、シャコガイ中に多く含まれるSymbidinium属は多くは検出されず、環境中の褐虫藻群がシャコガイに由来する可能性は明らかにはならなかった。 シャコガイの糞に関しては、糞中の褐虫藻の光合成活性をサンゴから放出された群と比較した。その結果、後者はほぼ24時間後にFv/Fmが0.4以下に低下するのに対し、シャコガイ糞中の褐虫藻は放出後3日後にも多くの褐虫藻が光合成活性を保っていた。このことから、糞を経由した褐虫藻の伝搬には、褐虫藻の活性を保つという利点が備わっていると思われた。 ウスエダミドリイシの幼生を用いてシャコガイ糞中の褐虫藻の感染実験を行ったところ、用いたシャコガイがCladocopiumのみを共生させていたために、サンゴへの共生確立は見られなかった。これは昨年度までの実験結果、すなわち、糞中のSymbiodiniumはサンゴへ感染するが、Cladocopiumは感染しないという結果を裏付けるものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シャコガイの糞を経由して褐虫藻がサンゴに共生するという成果はサンゴ礁の保全、回復事業とも連動し、宮古市を中心としたサンゴ礁保全に関わるNGOの協力を仰ぎ、すでに宮古市にシャコガイとサンゴの混合畜養システムを構築しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の仮説の下に,すでに沖縄県宮古市においてシャコガイとサンゴの混合畜養システムを構築しつつある。宮古市と強力に連携し、シャコガイとサンゴの混合畜養により、サンゴが褐虫藻を獲得しやすくなり、また、白化からの回復にも有利である仮説を現場実証する。
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