研究課題/領域番号 |
21H02270
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
河邊 玲 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 教授 (80380830)
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研究分担者 |
阪倉 良孝 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (20325682)
中村 乙水 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 助教 (60774601)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カンパチ / バイオロギング / 産卵場 / 回遊経路 / 遺伝子解析 / 東シナ海北部海域 |
研究実績の概要 |
1)行動調査:バイオロギングを用いる調査は、2021年11月15日に東シナ海北部(屋久島西方海域)にて実施した。屋久島から漁船を用船して、成熟した親魚を捕獲して状態の良い5個体に深度・水温・水平位置情報を経時記録できる切り離し浮上式データロガー(以下、ロガー)を取り付けて放流した。放流した5個体から尻ビレの一部を切除して、種と雌雄判別のために遺伝子解析に供した。ロガーは放流から産卵期(1-4月)が完全に終了した2022年6月中旬に切り離し装置が作動するように設定しておいた。行動記録はロガーが浮上後に衛星経由で通信して取得することから、100%のデータ回収率が見込める。この課題は研究代表者と分担者の中村が所属研究室の大学院生を指導しながら調査を実施した。 2)遺伝子解析:行動調査で用いた個体から採取したヒレサンプルを遺伝子解析に供したところ、5個体全てがカンパチであり、3個体が雌で2個体が雄であると判定された。 3)生殖腺発達解析:行動調査を実施している薩南海域に生息するカンパチ個体群の産卵期を同定するために、2021年11月から毎月成熟個体のサンプリングを開始した。11月から1月までは順調に毎月の最終が実施できたが、1月以降新型コロナウイルスの感染拡大により(オミクロン株)、現地に赴いての採集作業が困難となった。また、1月は漁業者の協力により実施できたが、2月以降は漁業者型の業務で忙しいとのことで協力が得られなくなりサンプルの収集が難しくなった。 4)業績:以前のデータを解析して論文として公表した(2報)。国内学会で2件、関連内容を報告した(水産学会秋季大会および水産海洋学会研究発表大会)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
行動調査は当初の計画通りに台湾におけるカンパチの産卵期と推定される1月の2か月前の11月に5個体の親魚を放流できたことから順調に進捗している。また、産卵期が完全に終了した後の6月に装置は個体から切り離されて海面に浮上させる予定であるが、全ての個体が未だに個体に装着されたままであることから行動記録も順調である点も追記しておきたい。また、行動調査に供した個体は形態的にはカンパチであることを確認して選定したが、遺伝子解析の結果からもカンパチの遺伝型を持つことを確認できてことも重要である。また、合わせて性決定遺伝子を解析して雄と雌の比率が2対3とばらついたサンプルが得られたことも重要な情報となった。一方で、1月以降の産卵期と目される時期の前に新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、生殖腺解析のためのサンプルが現場から得られなくなってしまった。この調査は来年度に持ち越しとなり、来年度に当該調査を再度実施することになる。
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今後の研究の推進方策 |
1)行動調査:バイオロギングを用いる調査は、2022年11月に再び東シナ海北部(屋久島西方海域)もしくは沖縄以南の海域から実施する。どちらの海域から実施するかは、2021年度のデータが得られて産卵期の回遊経路を速報的に解析して決める。調査自体は調査海域にて漁船を用船して、成熟した親魚を捕獲して状態の良い5-6個体に深度・水温・水平位置情報を経時記録できる切り離し浮上式データロガー(以下、ロガー)を取り付けて放流する。放流した個体から尻ビレの一部を切除して、種と雌雄判別のために遺伝子解析に供する。ロガーは放流から産卵期(1-4月)が完全に終了した2023年6月中旬に切り離し装置が作動するように設定する。しておいた。再び屋久島海域から放流調査を実施する場合、初年度に解析された回遊パターンが、再現性があるものかを検証する。 2)行動データの解析:初年度の個体から回収したデータより産卵期を含む放流期間の、(1)位置情報(緯経度)から産卵期を含む移動軌跡・分布、(2)経験水温記録から生息水温・産卵水温範囲、(3)産卵を伴う特異的な鉛直遊泳行動(業績2:Yasuda et al 2013 J Sea Res)を抽出し、いつ、どこで産卵行動が起こったのかを秒単位の高い解像度で再現する。 3)遺伝子解析:行動調査で用いた個体から採取したヒレサンプルを遺伝子解析に供して、種判別と性判別を行う。 4)生殖腺発達解析:行動調査を実施している薩南海域に生息するカンパチ個体群の産卵期を同定するために、2022年11月から毎月成熟個体のサンプリングを行う。新型コロナウイルスの感染拡大により、現地に赴いての採集作業が困難となることも想定して、漁業者と打ち合わせを密にしてサンプルの収集方法を改善する。
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備考 |
台湾南東部沿岸からカンパチを捕獲して行動記録計を装着し放流することで、これまで未解明であった同種の回遊生態を調べました。その結果、産卵期前の11月に放流された個体の多くは産卵期が始まる1月までに台湾東部を岸沿いに台湾北部の東シナ海の大陸棚縁辺部まで移動していることがわかりました。一方、産卵期を迎える1月以降になると、北部海域を離脱して今度は沖合の黒潮の中を南下することが明らかになりました。
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