研究課題/領域番号 |
21H02283
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
竹内 裕 金沢大学, 生命理工学系, 教授 (70418680)
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研究分担者 |
小林 功 金沢大学, 生命理工学系, 准教授 (30774757)
濱崎 将臣 長崎県総合水産試験場, 種苗量産技術開発センター, 主任研究員 (50506160)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生殖幹細胞 / X線照射 / 魚類 / 精巣 / Notch signaling / 蛍光免疫染色 / GFP |
研究実績の概要 |
魚類の異種間生殖細胞移植においては、特に、遺伝的距離が離れるにつれ、ドナー由来の精子は作れても卵は作れない、あるいは、ドナー生殖細胞は宿主生殖腺内に生着し増殖するものの、その後消失していく結果に終わる場合が多い。この課題を解決することが、代理親魚技術の適応範囲を大幅に広げ、魚類の育種や遺伝子資源保護の分野で利用されていくために必須である。本年度は、生殖腺内の各種の細胞が蛍光標識された遺伝子組み換えゼブラフィッシュを用いて、『ドナー生殖細胞を取り巻く宿主生殖腺内の微細環境の解明』および野生型のゼブラフィッシュとクサフグを用いて『宿主魚へのX線照射による空間および微細環境の整備』といった基礎的知見の集積を行った。 Notchシグナル活性化細胞が蛍光を発する遺伝子組み換えゼブラフィッシュ系統では、卵巣内の濾胞細胞が蛍光を発することを明らかにした。精巣内の体細胞でも蛍光が確認されたがどのような細胞種が蛍光を発しているのかまでは特定できなかった。これらの蛍光細胞が生殖幹細胞ニッチと関係するのか否かを解析中である。同時に、卵原・卵母細胞および精原・精母細胞の一部の発生段階において本シグナル伝達経路が活性化され蛍光を発することが明らかとなった。 ゼブラフィッシュおよびクサフグにエックス線を照射することで、一時的に生殖細胞の生存・増殖・分化に障害を与え、生殖腺を矮小化させることができるようになった。現在、これらの一時的不妊化個体に対して、ドナー生殖細胞の移植実験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子組換えゼブラフィッシュの解析が順調に進んでおり、精巣や卵巣内で蛍光を発する細胞の同定およびライブイメージングが可能となった。魚体に適量のX線照射を行うことで、精巣が一時的に縮小する現象を確認でき、今後の生殖幹細胞移植実験への応用が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在の体制で継続して研究を実施する。【生殖幹細胞を取り巻く微細環境(ニッチ)の可視化】 造血幹細胞移植研究のために作出された遺伝子組換えゼブラフィッシュ系統では、種々の遺伝子の転写制御領域によって発現制御された蛍光タンパク質が腎臓内のみならず生殖腺内でも発現している。生殖腺内のどの細胞種が蛍光標識されているのかは未知であるため、免疫組織化学染色で明らかにする。次に続く、生殖幹細胞移植実験で宿主として使用する“種々の生殖腺体細胞が蛍光標識されたゼブラフィッシュを継代飼育により量産する。 【宿主魚へのX線照射による空間および微細環境の整備】 X線照射により内在性生殖細胞を除去した蛍光標識ゼブラフィッシュを用いて、同種/異種(ティラピア)ドナー生殖細胞を移植後、蛍光観察によるドナー細胞の追跡を行うとともに、宿主が生産した配偶子のゲノムPCRおよび検定交配試験を行い、ドナー由来の機能的な配偶子が生産されたか否かを調べる。 【X線照射したクサフグ生殖腺内へのドナー(トラフグ)生殖細胞の移植・追跡・ドナー由来の配偶子生産の確認】 移植前処理として当歳の3倍体クサフグにX線照射を行った後、内在性生殖細胞が除去されているかを組織学的に解析し、移植適期を決定する。トラフグ未成熟精巣を酵素処理により分散後、精原細胞を含む集団を蛍光標識し、3倍体クサフグの卵巣・精巣内へ移植する。蛍光観察およびトラフグ生殖細胞に特異的なプライマーを用いたRT-PCRにより移植後の生着率や配偶子形成開始率の比較を行う。免疫関連遺伝子(rag1等)の発現解析により、X線照射が宿主の細胞性免疫応答を抑制できているか、さらには、移植成功率の改善に寄与したかを調べる。配偶子の種判別PCR、検定交配試験によりドナー由来の機能的な配偶子が生産されたか否かを調べる。
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