研究課題/領域番号 |
21H02301
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
宮入 隆 北海学園大学, 経済学部, 教授 (40422018)
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研究分担者 |
佐々木 貴文 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (00518954)
上林 千恵子 法政大学, その他部局等, 名誉教授 (30255202)
大島 一二 桃山学院大学, 経済学部, 教授 (40194138)
安藤 光義 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40261747)
桑原田 智之 農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (70832145)
堀口 健治 早稲田大学, 政治経済学術院, 名誉教授 (80041705)
大仲 克俊 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (80757378)
弦間 正彦 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90231729)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 外国人労働者 / 国際労働市場 / カンボジア / 外国人技能実習制度 / 特定技能制度 / 送出し機関 / ポストコロナ |
研究実績の概要 |
初年度(2021年度)は、未だコロナ禍にあって、海外調査を実施することは困難であったが、2年目となる2022年度(2022年4月-2023年3月)は、海外への渡航が可能になった。それにより、本研究の柱の1つである海外調査を実施したことが成果の1つである。なかでもカンボジアで送出し機関による技能実習生の選考過程について実態調査を行った堀口氏は、審査項目・基準と、農村部実習生の保護者も含めた対応のきめ細やかさを明らかにし、それら調査の成果をメディアを通じて発信するとともに、年度末の日本農業経済シンポジウム企画へと発展させた。その他、大仲氏もベトナム・ホーチミン市の企業調査を通じて、ベトナムでの日本向け人材派遣の変化について聞き取り調査を行っている。コロナ禍および円安の影響が大きく現れたベトナム人材の移動の変化については継続的な調査課題としている。合わせて、比較対象としているEUでも、外国人労働者の動きに関わる大きな変化が起こった。ロシアによるウクライナ侵攻である。桑原田氏は、そのような動向をいち早く捉え、英国を事例にした食料安全保障と外国人労働者の確保の問題をレビューしたほか、国際農林業協業協会『国際農林業協力』などにおいて、EU 農業部門における移民労働力の重要性と課題解決への取組みを報告している。 国内調査については、科研代表の宮入が北海道農業を事例にコロナ禍後の外国人材の変化、とくに特定技能外国人への移行や、JAグループによる人材確保支援の一環としての外国人派遣元企業との連携実態などを明らかにした。それらの動向を共同研究の一環として研究会を開催し、情報共有を図った。また、堀口氏のカンボジア調査との連動で、香川県でのカンボジア人技能実習生の受入実態を複数メンバーで共同調査した。以上の成果は宮入・堀口が企画した上述の学会シンポジウムの報告でも活用された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度は海外への渡航を伴う調査を行うことができなかったが、2022年度は、カンボジア、ベトナム等への調査を実施することができた。とくに、カンボジアでの実態調査と香川県での国内調査と連動させることで、コロナ禍以後にも継続して外国人技能実習生を受け入れている実態を明らかにすることで、学術的にも大きな成果を出すことが可能となった。また、日本国内のコロナ禍と円安後の人材確保および流動化の動向と、比較事例としてきた欧米での、とくに英国でのEU離脱後の移民労働者の受入政策の変化と、ロシアのウクライナ侵攻を受けたことによる移民労働者の受け入れに関する政策的課題について、桑原田氏の研究で知見を得たことも、今後の外国人労働者の受入政策研究にとって重要な成果である。大島氏は中国での実態調査が制限されるなかでも、留学生に協力してもらい、中国での人材流動化の動向を把握するための研究を行っている。 国内産地の外国人労働者の雇用実態については、コロナ禍による入国制限と連動しつつ、外国人技能実習制度から、特定技能制度への移行が進む実態を、北海道を事例に追跡調査を継続してきた。これら最新の動向を学会シンポジウムへとつなげられたことも大きな成果といえる。 国内の他産業比較として、佐々木氏による漁業、上林氏による地方製造業での外国人労働者の雇用調査結果も論文等で報告された。
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今後の研究の推進方策 |
国内調査において、例えば、北海道内の実態分析から、技能実習制度の制度的な課題を受けて進展をみせる特定技能制度を中心とした人材確保の多様な手法展開を受けて、派遣形態による雇用よる南北間の繁閑差を前提にした人材移動に関する実態把握など、新たな研究課題も見えてきた。また、建設業界で早くも特定技能2号への移行を果たした外国人材があらわれたことと、農業での2号取得の可能性もみえてきたという状況変化もあり、大規模法人経営での幹部候補生など、単なる単純労働力としてではない外国人材の雇用のあり方も捉える必要も出てきた。 このように、実態調査の進捗状況と合わせて、2023年4月に明らかとなった技能実習制度の廃止など、外国人材受入制度の見直し方向を受けて、最終年度となる2023年度には、第1に、急激に存在感を増している人材の給源国、インドネシアでの実態調査と、人数的に最大の外国人材の受け入れを行っている茨城県を連動して調査を実施することとした。これは2022年度のカンボジア・徳島県調査と同様の手法である。第2に、北海道の人材確保の多様化に合わせて、繁閑が異なる九州・沖縄での動向を連動して捉えるための調査を行うことなど、調査設計も再検討しつつ、最終年度にとりまとめを行うこととした。 共同研究プロジェクト全体の報告書の作成については、早稲田大学のレポジトリを活用して公表すること、そして、2023年3月に続き、2024年3月末の日本農業経済学会の特別セッションにおいて、本研究プロジェクトの研究分担者で座長と報告者を担い、広く研究者間での成果の共有を図ることとした。
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