研究課題/領域番号 |
21H02306
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
澤田 豊 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (60631629)
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研究分担者 |
中澤 博志 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (20328561)
竹川 尚希 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (20828157)
小野 耕平 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (30804166)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ため池 / ため池の廃止 / 土石流 / 豪雨 / 模型実験 |
研究実績の概要 |
本研究は廃止するため池を治水施設として利用する方法を確立するため,土石流がため池内に流入した際の挙動ならびに堤体への衝突荷重を明らかにするとともに堤体の安定性評価と補強を検討するものである. 令和3年度には,ため池内に土石流が流入した場合の基本的な挙動やため池堤体に作用する衝突荷重について検討することを目的に土石流実験を実施した. 土石流実験には,幅300mm,流下斜面長約2000mm,傾斜角45°のアクリル製水路を用いた.水路斜面部には,土石流の流入速度を測定するため,レーザー変位計を3台設置した.また,本年度の主目的である衝撃荷重を測定するため,堤体模型を直壁として,3台の荷重計を設置した.実験は土石流を模擬した砕石(平均粒径5mm)やセラミックビーズ(3mm~30mm)を上部から流下させ,下流の貯水状態を模擬した堤体模型に衝突させた.その際,堤体模型への衝突荷重を計測するとともに,土石流の挙動を明らかにするため,高速度カメラによる撮影を行った.実験条件としては,貯留水による影響を考慮するため,貯水無し,水位20,50,100,150mmに変化させたほか,斜面下端からの距離や流下速度を変えたケースを実施した. 実験の結果,貯水された場合,土石流は,流入後に急激な水位変動を引き起こし,貯水無しの実験で得られた堤体への衝突荷重よりも大きかった.当初期待した貯留水によって,堤体に作用する荷重が低減する効果は確認できなかった.また,貯水が無い場合の荷重は,衝突直後からわずかにではあるが増加し,後から押し寄せる土石流の衝突荷重が前方にまで伝播することが確認された.一方,堤体が無い条件では,低い水位でも土石流の到達距離が短くなる傾向があり,貯水による土石流の減勢効果を確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は,当初の計画で掲げた通り,アクリル製の水路を製作し,様々な条件下での土石流実験を実施することができた.その結果,これまで十分に検討されてこなかった貯水時のため池に土石流が流入した場合の基本的挙動や衝突荷重特性を明らかにすることができた.当初期待していた貯水による土石流の減勢効果に関しては,土石流流入による急激な水位変動の影響により,衝撃力の低下は確認できなかったものの,土石流先端の到達距離が短くなるという効果は確認できた.令和4年度には,土石流実験を数値シミュレーションで再現することを目標としており,そのベンチマークとしても有用な結果が得られたものと評価できる.以上より令和3年度の研究の進捗状況としては,おおむね順調に進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に実施した土石流実験は,基本的な土石流流入挙動について重要な知見を得たが,斜面部と貯水部の幅が同一であるなど,実際とは異なる条件で実施されてきた.また,令和3年度の土石流実験の結果から,水位変動が堤体の安定性に影響を及ぼす可能性が高いと考えられた.そこで,当初計画していた堤体への落球による衝撃載荷実験から堤体の安定性を検討するのではなく,より現実的な条件での土石流実験を通して,貯水部の水位変動を定量的に検討する計画に変更する. また,室内で行われる土石流実験では,実際の規模とは条件が大きく異なる.そこで,令和4年度には,土石流の流下およびため池内への流入,堤体への衝突までの一連のプロセスに関する数値解析を行う.当初の計画では,解析コードにオープンソースを用いる予定であったが,土石流の解析で実績がある汎用ソフトウェアを購入する計画に変更した.衝撃載荷実験用土槽の製作費用を当ソフトウェア購入に充当する予定としている.
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