研究課題/領域番号 |
21H02307
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
酒井 一人 琉球大学, 農学部, 教授 (10253949)
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研究分担者 |
甲斐 貴光 明治大学, 農場, 特任准教授 (00806226)
登尾 浩助 明治大学, 農学部, 専任教授 (60311544)
仲村渠 将 琉球大学, 農学部, 准教授 (70537555)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NDIR / 土壌ガス / N2O / ガス透過性チューブ |
研究実績の概要 |
GHGsインベントリにおいて、農業からのGHGs排出量は、一般的にIPCCが示す排出係数を用いて算定する。しかし、その係数は、温・冷帯での研究結果により決められており特に熱帯・亜熱帯のように高温多湿な条件におけるN2O排出係数は未定である。従って、熱帯・亜熱帯における観測に基づいたN2O排出係数の特定や排出特性の把握が不可欠である。そこで本研究では、途上国の農地においても測定可能なNDIRガス分析装置の開発、その装置を用いてガス土壌ガスN2O濃度からガス排出量を推定できるシステムの構築、および研究成果の現場での実証を目的として研究を進めている。 2021年度の本研究では、次の課題の実現を目的として研究を進めた。 ① 製作したNDIRガス分析装置を実圃場でより利用しやすくするために可搬性の改良(除湿部、ガスセル部の小型化など)をすることでシステムを完成させ、量産体制化を図る。 この課題について2021年度は、これまで試作を進めてきたPyreos社製パーツによるNDIRガス分析装置により、ガス透過性チューブ(シリコンチューブ)を用いて土壌ガス内のN2O濃度の掲示変化を測定する室内実験を行った。同時にFTIRにより土壌表面からのN2O排出量の測定を行った。そして、土壌ガスN2O濃度測定値から土壌表面のN2O排出量を拡散方程式を解くことにより推定することを試み、推定手法を確立した。 本研究の過程で、シリコンチューブへの水蒸気による水分透過量が土壌表面の測定ガスに含まれる水蒸気量より大幅に少なく除湿剤(シリカゲル)の交換の頻度をかなり少なくできることがわかった。このことは、目標とする観測システムでの除湿部分を小型化することができること、少しでも長期の連続測定が可能であることなど機器可改良に向けての重要な知見となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的に以下のものがある。 ② 熱帯(タイ、スリランカ、フィリピン)および亜熱帯(沖縄)において、 開発した量産型NDIRガス分析装置を用いて多点連続観測を行い営農・土壌・気象条件と土壌からのN2O排出との関係を明らかにし、各地域でのN2O排出係数を特定する。 当初は2021年度には海外渡航が可能になると考えていたが、コロナ感染症の拡大がおさまらず、11月の段階で2021年度の海外での研究展開を断念し検討し直すこととなった。また、沖縄県内においても本島から離島への渡航が制限され石垣島でのフィールド実験についても延期することとなった。 このような状況に対して、室内実験での検証を中心としたNDIRガス分析機器の開発・改良に方針を切り替え研究を進めた。また、目標の一つであるAPSIMによるモデル化に関連してAPSIMの窒素収支に関する感度分析についての研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度コロナ感染症拡大の影響で進めることのできなかった開発したNDIRガス分析機器を用いた実フィールドでの検証について、沖縄県離島および海外フィールドにおいて調査研究を前進させる。 NDIRガス分析機器のコストパフォーマンスは、用いる光学パーツ(主に光源と赤外検出器)のコストパフォーマンスに大きく影響される。近年、中赤外で利用可能な光学パーツの販売が増えておりより有効な光学パーツを用いたNDIRガス分析機器の開発検討を継続する。また、複数地点をより少ないコストで同時に測定するためのシステム改良について検討を進める。 土壌ガスN2O濃度を用いたN2O排出量推定の精度を上げるには、土壌のガス拡散係数推定が重要であることが認められた。そのため、より簡易に土壌のガス拡散係数を求めることができるシステムの構築について検討する。
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