研究課題/領域番号 |
21H02311
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
粉川 美踏 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10732539)
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研究分担者 |
横矢 直人 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (40710728)
蔦 瑞樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (80425553)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハイパースペクトルイメージング / スペクトル分解 / 非破壊分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、非破壊分析手法でありながら、クロマトグラフィーをベースとした化学分析にならい、目的成分とその他の成分を分離してから検出・定量する手法を開発することを目指した。試料を破壊せずとも、試料表面の同時多点計測(イメージング)を行うことで、元々空間的に別れて存在している成分のスペクトルを計測時に分離できる点に着目し、空間情報を用いてスペクトルを分解する本手法を「空間スペクトル分解法」とよぶ。本研究では、扱いが容易である液体(エマルジョン)や粉体試料を用い、マイクロメートルスケールでのハイパースペクトル画像における空間情報をスペク トル分離に用いた。本年度は、計測システムの構築および、空間スペクトル分解法の計測・解析方法を開発した。 まず、ハイパースペクトル画像を計測するための、顕微ラマン分光システムおよび自家蛍光イメージング装置を整備・構築した。前者については露光時間や空間解像度等のパラメータ設定、後者は解像度向上および紫外波長領域での感度向上のための装置改良を行った。 次に、成分混合比が既知のO/Wエマルジョンを複数条件で調製し、この試料を用いて空間スペクトル分解法の計測・解析手法を確立した。スペクトル情報としてラマン分光法を用いた。空間情報とスペクトル情報を合わせ持ったハイパースペクトル画像を取得し、画像中の1画素の領域に存在する成分の中から、信号源(純粋な成分のスペクトル)を求めた。この信号源を使ってスペクトル分解を行うことで、目的とする成分とそれ以外の挙動を分離することができた。最後に各画素のスペクトルを各信号源とその濃度に分解し、目的とする成分の濃度を全ての画素について平均して、試料全体としての濃度を求めた。 本研究成果に関する学会発表を2件、招待講演を1件おこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の計画通り、以下の課題に取り組んだ:(1) 顕微ラマン分光システムおよび自家蛍光イメージング計測システムの構築および整備、(2) O/Wエマルジョンの計測、(3)解析アルゴリズムの確立(スペクトル分解、定量)、(4)定量結果の評価を行うことができた。 (1)では露光時間や空間解像度等のパラメータ設定、解像度向上および紫外波長領域での感度向上のための装置改良を行った。(2)から(4)に関しては、計測条件の最適化、スペクトル分解アルゴリズムの選定や実装、定量までの流れはすべて具体的に進めることができた。多点計測では、計測点が多くなるほど計測時間が長引くため、露光時間をなるべく短くしつつ、スペクトルの精度を向上させるための計測条件を探った。また、スペクトル分解アルゴリズムは、食品化学分野で使われているアルゴリズムに加え、リモートセンシング分野で使われているアルゴリズムも組み合わせ、それぞれの利点を生かした解析を行うことができた。 一方で、試料全体の濃度推定のためには、比較的均一な計測試料の調製が必要であることがわかった。今年度取り組んだ0/Wエマルジョンは安定性が低く、油相の合一等の問題があった。今後はこの点での工夫が求められる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は液体試料に加えて粉体試料を用い、マイクロメートルスケールでのハイパースペクトル画像における空間情報をスペク トル分離に用いる。また、微量成分をターゲットとしたスペクトル分解と定量を行う。以下の流れに沿って研究を進める。 粉体試料の計測では、成分混合比が既知の粉体試料を複数条件で調製し、この試料を用いて空間スペクトル分解法の計測・解析手法を確立する。スペクトル情報としてラマン分光を用いる。粉体試料から安定したスペクトルデータを取得するためには、試料表面の均一化が必要となる。そのために錠剤化等の手法を用いる。この試料に対して、空間情報とスペクトル情報を合わせ持ったハイパースペクトル画像を取得し、画像中の1画素の領域に存在する成分の中から、信号源(純粋な成分のスペクトル)を求める。この信号源を使ってスペクトル分解を行うことで、目的とする成分と それ以外の挙動を分離することができる。各画素のスペクトルを各信号源とその濃度に分解し、目的とする成分の量を求める。 微量成分の定量では、同様に計測した試料のハイパースペクトル画像を取得し、スペクトル分解を行う。分解して得られたスペクトルのうち、ターゲットではない成分のスペクトル情報を削除することで、微量成分に関連するスペクトル強度を高め、定量精度の向上を狙う。
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