自然林の農地化が進むことで、多様性が損失し、栄養素の循環など地球にとって重要な生態系サービスが損失するという可能性が示唆されている。一方で、栄養素の循環を駆動する上で重要な土壌微生物に関してはその多様性そのものの調査が進んでいないのが現状である。特に、森林の減少、農地化が顕著なサブサハラアフリカではデータが少ない。そのため、当該年度においては、森林から農地への転換、つまり化学肥料の散布や植生の変化が、土壌微生物多様性にどのような影響を及ぼすのかを、特に硝化機能を持つ微生物に着目しながら調べた。調査対象地としては、サブサハラアフリカのザンビア、ケニア、マラウイの土壌炭素量が低い土壌を用いた。まずわかったこととして、土壌の原核生物群集と真菌群集の不均一性は、農地では自然地よりも低く、農業管理によって微生物群集構造が均質化されていることが挙げられる。また、このような微生物群集の分類学的不均一性は、窒素循環に関係したサイクルに関連する機能や菌類の生活様式の不均一性と相関していた。結論として、自然生態系の農地化は、小規模な希少微生物群のローカルニッチを減少させる可能性があることがわかった。さらに、硝化菌の群集構造に関しては、Clusters 3a.2と3bと呼ばれるグループが農地化によって増加していることがわかってきた。これらがアンモニア肥料など硝化に関わる基質に素早く反応し、土壌の硝化機能を変化させている可能性があり、窒素の土壌からの流亡などとも関連している可能性が示された。
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