ジャガイモ2品種(男爵・出島)用いて品種間差異について検証した。その結果、男爵よりも出島の方が高CO2環境下で比較的早く老化し、しかもその老化速度は尿素よりも硝酸態窒素を供与した場合に顕著であった。この出島においては、尿素供与に伴う老化抑制が移植後93日目のバイオマス生産の向上に貢献し、老化進行の早かった硝酸供与個体よりも有意に大きかった。ただし、男爵においては供与窒窒素形態が老化に与える影響は小さかったため、バイオマス生産も有意に変化しなかった。さらに、ダイズの根粒着生系統と非着生系統を用いて、それぞれに尿素・硝酸を供与し、高CO2環境下での老化速度を解析した。その結果、大気N2を窒素源として利用可能な根粒着生系統では供与する窒素形態に依存することなく老化が遅いのに対して、根粒非着生系統では下位葉の老化が促進されること、しかもアンモニア態窒素よりも硝酸態窒素を供与した場合により顕著となり、ジャガイモと同様の傾向を認めた。 CO2濃度上昇は光合成能を低下させることなく蒸散量を強く抑制する結果、水利用効率が著しく向上して植物の水需要を大きく低下させる。これは日中の光があるときの場合であるが、光のない夜間でも植物は蒸散で水を消費している。この夜間の蒸散では光合成が行われないため、無駄な水消費とみなされてきたが、高CO2環境が夜間の水消費に与える影響については不明であった。イネ5品種を用いて、湛水から乾燥までの土壌水分条件下で夜間蒸散の役割を異なるCO2濃度環境下で調査した。乾燥条件下では夜間蒸散量が多いほどバイオマス生産も高くなること、しかし湿潤土壌ではむしろ夜間蒸散量の抑制がバイオマス生産に有利となることが示唆された。高CO2環境は昼間の蒸散を強く抑制したが、夜間蒸散に対する影響は相対的に小さく、結果として夜間/昼間の蒸散比を大きく増加させることが判明した。
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