研究課題/領域番号 |
21H02329
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉山 暁史 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (20598601)
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研究分担者 |
安藤 晃規 京都大学, 農学研究科, 助教 (10537765)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ホロビオント / 根圏 / イソフラボン / サポニン |
研究実績の概要 |
根圏とは「植物根から影響を受ける領域」と定義される根近傍の土壌領域であり、土壌微生物の活性が高く、植物の生育に重要であることが広く知られている。根圏微生物叢が植物の健全な生長や作物収量に大きく影響することが明らかにされつつあり、根圏微生物叢の形成と機能ついて広く研究が進められている。本研究では植物と根圏微生物叢の相互作用をホロビオントとして一体的に捉え、根圏微生物叢の形成に重要な役割を担う二次代謝産物の根圏での動態と、それらを代謝する微生物の機能を時空間的に解析することにより、ホロビオント形成の分子機構と植物生育に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 今年度はイソフラボンを分解するダイズ根圏細菌(Variovorax属)を用いて、ゲノム解析およびトランスクリプトーム解析により候補遺伝子を絞り込み、イソフラボン分解に関与する酵素遺伝子を同定した。分解産物の構造を明らかにするとともに、変異株を作成し、次年度の解析への準備を進めた。根圏イソフラボン代謝に関与する他の遺伝子についても、順次解析を進めている。 ムライトセラミックチューブを用いて代謝物を添加することにより、根圏環境の再現を行った。一次代謝産物を用いて、根に近いほど細菌数が多くなるという現象を再現することができた。土壌を加えた条件での解析も行った。疑似根からの一定の距離ごとに土壌を回収し、DNAを抽出して16S rRNA配列のアンプリコン解析に供した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
根圏イソフラボン代謝経路の解析については、イソフラボン分解にかかわる新規な遺伝子を同定することができた。酵素活性の測定や分解産物の構造決定も行った。また、ムライトセラミックチューブによる根圏再現系も手法を確立している。イソフラボン代謝に関わる遺伝子の同定やムライトセラミックチューブでの解析手法の確立については日本農芸化学会大会で発表を行った。次年度には論文化に向けて研究を進めている。以上のことから、全体的にはおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
根圏イソフラボン代謝経路については候補遺伝子が複数得られているので順次解析を進める。さらにVariovorax属の菌株を用いてイソフラボン代謝に関わる変異株を作出し、ダイズ根圏でのホロビオント形成についての研究を行う。イソフラボン以外の代謝産物についても根圏微生物のゲノムから分解に関与する遺伝子の同定を進める。ムライトセラミックチューブを用いた根圏再現系を活用し、根圏領域での代謝物、微生物の時空間的な動態解析を進める。研究成果に関しては順次、論文発表を行う。
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