研究課題/領域番号 |
21H02331
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
浅岡 聡 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (60548981)
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研究分担者 |
梅原 亮 広島大学, 環境安全センター, 助教 (40825791)
井原 一高 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50396256)
吉田 弦 神戸大学, 農学研究科, 助教 (60729789)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 栄養塩 / 貧栄養化 / メタン発酵 / 資源循環 / 肥沃化 |
研究実績の概要 |
現在,一部しか利活用先が開拓されていないメタン発酵で副生する消化液の新たな有効利用方法を開拓できればバイオガス発電の普及が容易となる。また,近年の貧栄養化に伴う漁業生産量の低下を回復させることも重要な課題である。そのため,畜産廃棄物由来のメタン発酵消化液をバインダーで固め,貧栄養化海域に栄養塩を溶出させ肥沃化を達成するための海洋肥沃化ペレットを開発する。2021年度の実績は以下の通りである。 (1)海洋肥沃化ペレットの作製に好適な消化液の作製では,メタンガス収率が高く,かつ海洋肥沃化ペレット作製に好適な栄養塩濃度が高い消化液が生成されるメタン発酵条件のパラメーターを決定することを目的とした。畜産廃棄物などを基質に嫌気条件下で発酵試験を行うと消化液中の溶存態無機窒素は主としてアンモニア態窒素であった。アンモニア態窒素は微細藻類の増殖にとって必要であるが,ワカメやノリの色落ちを防ぐためには,消化液中の硝酸態窒素濃度も上昇させる必要がある。今後,消化液の硝酸態窒素濃度を上昇させるための発酵条件を検討する。消化液中のリン濃度は,消化液のpHを6に低下させると上昇した。 (2)海洋肥沃化ペレットの作製および,海洋肥沃化ペレットからの栄養塩の溶出挙動の把握では,消化液を固化させてペレットを成型するため,現場使用に耐えうる強度が得られるセメントをバインダーとして海洋肥沃化ペレットを作製した。海洋肥沃化ペレットから人工海水への栄養塩溶出量をバッチ法にて評価したところ,主たる溶存無機窒素はアンモニア態窒素で,62 ug-N/g溶出,リンについては,リン酸態リンが6 ug-P/g溶出した。 (3)2022年度の本実験に向けて海洋肥沃化ペレットによる微細藻類の増殖を評価するため, f/2培地で底生微細藻Nitzschiaの培養方法の最適化,および大型水槽でワカメを培養するための予備実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は以下の項目を計画し,いずれも成果が得られており,概ね順調と判断した。 (1)海洋肥沃化ペレットの作製に好適な消化液の作製 (2)海洋肥沃化ペレットの作製および,海洋肥沃化ペレットからの栄養塩の溶出挙動を把握 (3)次年度の本実験に向けて海洋肥沃化ペレットによる微細藻類の増殖を評価するための培養法を確立 (4)次年度の本実験に向けて,海洋肥沃化ペレットによるワカメの増殖試験法を確立
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今後の研究の推進方策 |
今年度,予備試験で次の2つの課題が明らかになった。 (1)次年度の本実験に向けて海洋肥沃化ペレットによる微細藻類の増殖を評価するための培養法を確立 底生微細藻類の培養実験において試験開始時の細胞密度が10000cell/L未満である場合,評価が難しくなることが明らかになった。また,ガラスビーズを藻類の培養器に入れることで培養器の壁に付着した底生微細藻を剥がすことができ,精度よく細胞数の計数ができることが明らかになった。これらの知見を参考に2022年度は本実験を行う。 (2)次年度の本実験に向けて,海洋肥沃化ペレットによるワカメの増殖試験法を確立 現在の消化液の組成では,ワカメの培養を想定した場合,硝酸態窒素の溶出が少ないことがわかった。2022年度は海洋肥沃化ペレットからの硝酸イオンの溶出量の増加を図るための検討を行う。
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