研究実績の概要 |
鳥インフルエンザ感染で採卵鶏が大量に殺処分され、その結果、卵価は高騰し、採卵鶏の飼養羽数の確保が国民の生活水準を維持するために非常に重要であることが明らかとなった。そこで、飼養羽数確保のための飼養技術の確立を目指した。実験は、1)従来のバタリーケージ飼育のC区、2)C区に止まり木と爪研ぎをエンリッチド処置したCE区、それと3)平飼いのF区で実施し、採卵鶏に適した飼育環境を検証した。 盲腸内細菌叢の解析結果から、乳酸菌群およびビフィズス菌群の値がC E区において他の2区よりも高いことが示された。一方、大腸菌群やクロストリジウム菌群については、F区で高いことが認められた。サルモネラ菌群およびカンピロバクター菌群に関しては、区間に差は示されなかった。 試験開始前には、3区間に血液と卵黄のコルチコステロン濃度に差は見られなかった。試験終了時には、C E区の血液と卵黄コルチコステロン濃度が増加傾向にあったものの、3区間で統計的な差はみられなかった。血液中のIgY濃度は、試験前と試験後の何れにおいても3区間で差は見られなかった。よって、C区に比べて、C E区やF区で採卵鶏のストレスが軽減されるとの証拠は得られなかった。また、2週間程度の飼育環境の変化では免疫機能への影響はないと考えられた。 さらに、卵黄の遊離アミノ酸の濃度変化を長期的なストレスや栄養状態の指標と捉え評価した。C区では、測定した21種類全てのアミノ酸において実験開始時と終了時に有意な差は認められなかった。CE区とF区では終了時に共通してAsp, Glu, Ser, Asn, TyrおよびLeu濃度が有意に減少した。さらに、CE区ではGlyとGlnが、F区ではArg, Pro, Val, Ile, Phe, Trp, Lysも有意に減少した。C区に比して、CE区とF区では飼料タンパク質の要求量が高まる可能性が示唆された。
|