研究課題/領域番号 |
21H02355
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
米澤 智洋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10433715)
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研究分担者 |
柏原 直樹 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10233701)
桃井 康行 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40303515)
中島 修 山形大学, 医学部, 教授 (80312841)
前田 真吾 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (80755546)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
今年度は去年度に引き続き、実験2と実験3を継続した。実験2では、ALAS1ヘテロ欠損マウスで生じている酸化障害、腎機能障害についての基礎的情報を網羅的に収集した。去年度観察されたALAS1ヘテロ欠損マウスにおける糸球体の基底膜構造および近位尿細管の特徴的な病変が、ミトコンドリアの障害に伴い生じるラメラ小体である可能性を明らかにした。また、この動物に5-ALAを反復投与すると、これらの病変は改善した点について、電子顕微鏡を用いて詳細に観察するとともに、統計的に価値のある頭数まで増やして確度をあげた。これらの結果から、酸化障害が糸球体の基底膜の構造や近位尿細管を犯すこと、またその病変の一部は可逆的であり、慢性腎臓病と評価される状況であっても、5-ALAの投与によって一定の治療効果があることを明らかにした。実験3では、自然発症した腎臓病のネコの病理組織における近位尿細管と酸化ストレス障害の関係について観察するために、試料集めを行った。集めた血漿、尿中の各種酸化ストレスマーカーを測定したところ、8OHdGと4HNEの濃度が慢性腎臓病の猫で増加しており、病気が進むにつれて上昇傾向にあること、また5-ALAの投与によってこれが減少する傾向が認められた。猫における精度の高い腎臓病の酸化ストレスマーカーは存在せず、これが確立すれば臨床上大変有意義であると考えられる。今後さらに検体数を集め、感度と特異度を明らかにしていく予定である。また、実験1では、ヒト腎近位尿細管上皮細胞株による3D培養の予備実験としてmdck細胞株を用いた酸化ストレスに対する反応について解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性腎臓病でなくなった猫の多くは剖検されることがないため、試料の採取は予想以上に困難であった。各大学の病理部門、および民間の検査会社に打診し、慢性腎臓病各ステージの腎臓を数例ずつ収集した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も引き続き実験2、3に注力するとともに、総まとめを行っていく。実験2ではALAS1遺伝子改変マウス、蛋白負荷による慢性腎臓病モデルマウス、ネコの腎芽組織由来培養細胞株、およびヒト尿細管細胞株を用いた形態学的及び分子生物学的手法による研究を行う。酸化ストレスが近位尿細管に及ぼす病態の解明には、ALAS1ヘテロ欠損マウスの酸化障害、腎機能障害についての基礎的情報を網羅的に収集する。また、酸化ストレスの測定は、形態的変化だけではなく、血漿中8OH-DGをはじめとする、これまでに確立した複数の項目を用いて評価する。これらの実験で得られた検体中の蛋白質、脂質、過酸化物質について、既知の物質の 測定だけでなく、LC-MS/MS解析、GC-MS/MS解析を行って、早期診断マーカー候補を探索する。実験3では、ネコ臨床症例を対象に、抗酸化物質に対する反応性を評価する。経過を追って観察し、実臨床での効果の是非について注意深く観 察する。
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