研究課題/領域番号 |
21H02372
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
後飯塚 僚 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 教授 (50301552)
|
研究分担者 |
樋上 賀一 東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 教授 (90253640)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 胎生期 / B細胞 / 早期ライフステージ / 免疫 |
研究実績の概要 |
腹腔などの脂肪組織に局在し、CD5およびCD11bを細胞表面に発現する一群のB細胞はB-1細胞と呼ばれ、胎児造血系(卵黄嚢、AGM、胎児肝臓)に由来し、広域交差反応性の自然抗体や抑制性サイトカインIL-10を産生することで免疫制御に関与するinnate-like B細胞として報告されてきた。しかしながら、成体で維持されているB-1細胞の発生起源や組織局在に関する多様性は明らかにされていない。そこで、B細胞抗原受容体(BCR)遺伝子の再構成に関与するRAG2を胎生期に発現した履歴のあるB細胞を特異的に標識・追跡するシステムを作成し、成体における組織分布ならびにBCRレパトアについてRNA-seqにより解析した。その結果、成体腹腔、脂肪関連リンパ球集積(FALC)および脾臓においてB-1細胞の表現系を示す細胞の約40%および10%は胎児由来であることが判明した。また、変性自己抗原であるフォスファチジルコリンと反応するB-1細胞に典型的なBCRを発現する細胞は胎児ならびに成体由来いずれのB-1細胞表現型を有する細胞群に存在することが示された。さらに、組織(腹腔、FALCおよび脾臓)特異的なB細胞抗原受容体を発現する胎児由来B-1細胞が存在し、胎児に由来する脾臓B-1a細胞で優先的なBCRレパトアがFALCにおける胎児由来B-1b細胞においても共有されていることが明らかになった。以上の知見から、成体においてB-1細胞の表現型を示す細胞群は胎児および成体由来、フォスファチジルコリン反応性・非反応性という観点から、4つの異なる細胞群から構成されており、それぞれが特異的な機能を有することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胎生期環境で発生・分化し、成体内臓脂肪組織に局在する胎仔型B細胞を標識し、機能解析するシステムを確立した。当初は、胎仔型B細胞の分化や成体における維持に必須の転写因子であるBhlhe41遺伝子の翻訳開始コドンにテトラサイクリントランスアクチベーターをノックインしたマウスとテトラサイクリン応答性配列の下流でCreを発現するマウスを用いてCreの活性化によって細胞系譜追跡するシステムを用いたが、胎仔型B細胞におけるBhlhe41遺伝子の発現が低いためか、テトラサイクリン誘導性が認められなかった。そこで、免疫グロブリン遺伝子の組換えに必須のDNA切断酵素であるRAG2遺伝子座にテトラサイクリントランスアクチベーターをノックインしたマウスを作成し、同様なテトラサイクリン誘導システムを構築したところ、胎生期CD19+ B細胞をほぼ全て標識することが可能となった。本テトラサイクリン制御システム(RAG2-tTA-Tet-OFFおよび RAG2-rtTA-Tet-ONマウス)を用いることで、研究目標を達成可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、胎生期環境で発生・分化し、成体内臓脂肪組織に局在する胎仔型B細胞を、胎生期にRAG2発現履歴のあるB細胞として遺伝学的に識別することで、成体における役割、まずは定常状態における機能について、解析を行う。具体的には、B細胞を欠損するマウスに胎仔型B細胞を移入する系、胎生期からジフテリア毒素で細胞除去する系ならびに成体で細胞除去する系を用いて、成体レベルでの機能の検証を行う。また、培養系を用いて、胎仔型B細胞と成体型B細胞の機能的な差異についても解析する。
|