自然抗体としてのIgMおよびIgAはそれぞれ骨髄ならびに腸管粘膜固有層に局在する形質細胞が主な産生源であり、それらの細胞は出生前後に発生するB細胞に由来すると考えられている。そこで、RAG2遺伝子の転写履歴を持つリンパ球系細胞を追跡できる発生時期選択的テトラサイクリン制御システム (RAG2-tTA-Tet-OFFおよび RAG2-rtTA-Tet-ONマウス) を用いて、胎児期、新生児期および成体期を含む3つの時期に発生・分化するB細胞の成体骨髄および消化管粘膜固有層形質細胞プールへの寄与ならびにIgHレパトアについて解析した。その結果、成体骨髄のIgM形質細胞の約80%、成体消化管粘膜固有層のIgA形質細胞の約20%が胎児および新生児期由来であった。IgHレパトアの関連性についてMorisita overlap法を用いて解析した結果、胎児期に由来する骨髄IgM形質細胞は腹腔、脾臓および骨髄B-1a細胞の全てと顕著な類似性を示したが、新生児期骨髄IgM形質細胞は骨髄B-1a細胞とのみ類似性を示すことが示された。一方、成体由来のIgM形質細胞は成体由来のいずれのB-1a細胞とも類似性を示さないことが判明した。また、IgA形質細胞の分化にはJ鎖が関与することを明らかにした。
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