研究課題/領域番号 |
21H02373
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
手嶋 隆洋 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (80610708)
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研究分担者 |
高野 貴士 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (20462781)
道下 正貴 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (50434147)
佐々木 崇 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50723897)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脂肪由来間葉系幹細胞 / インスリン産生細胞 / 犬 |
研究実績の概要 |
本年度は、①優れた分化誘導効率を発揮する脂肪由来間葉系幹細胞の細胞集団の同定と②インスリン産生細胞への分化誘導効率を高める遺伝子の解明を計画した。①の解析については、脂肪由来間葉系幹細胞を表面抗原の発現様式からポピュレーション分類を行い、それぞれのグループについて、インスリン産生細胞への分化誘導を実施した。その結果、表面抗原の発現様式によるポピュレーション分類では、インスリン産生細胞への分化誘導効率に明らかな差はみられず、間葉系幹細胞をバルクで分化誘導した結果と同等の誘導効率であった。そのため、表面抗原の発現パターンから分化誘導効率に優れた細胞集団を特定することは困難であると考えられた。 ②の解析については、これまでの研究成果から数種類の候補遺伝子が特定できているため、本年度はこれらの遺伝子導入によって分化誘導効率に変化が生じるのかを検討した。初めに、候補遺伝子それぞれのプラスミドDNAを作製し、間葉系幹細胞への遺伝子導入を試みたが、導入効率が著しく低い結果であったため、プラスミドDNAによる遺伝子導入は適さないと判断し、アデノウイルスベクターを利用した遺伝子導入に変更した。数種のアデノウイルスベクターによる遺伝子導入効率を比較したうえで、候補遺伝子のアデノウイルスベクターを作製し、インスリン産生細胞へと分化誘導を試みた。その結果、膵β細胞への分化に関与する転写因子群を遺伝子導入することで、分化誘導効率の向上が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のうち、①優れた分化誘導効率を発揮する脂肪由来間葉系幹細胞の細胞集団の同定については、いまだポピュレーションは特定できていないが、表面抗原の発現パターンによる分類は困難であったことから、シングルセル解析等の解析手法の必要性が高いと考えている。本年度中にシングルセル解析を実施することが理想的ではあったが、ポピュレーションの特定に必要な解析の道筋は立てることができたため、研究計画の遅れにはならないと考えている。 また、②インスリン産生細胞への分化誘導効率を高める遺伝子の解明については、これまでの研究から候補として想定していた転写遺伝子群が鍵となることが明らかとなった。①の解析が進展することで、更なる候補遺伝子を検出できる可能性もあるが、ナイーブな状態の脂肪由来幹細胞よりも遺伝子導入を施すことで、インスリン分泌能が高まる結果であったため、②の研究計画については順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果をふまえて、①優れた分化誘導効率を発揮する脂肪由来間葉系幹細胞の細胞集団の同定については、遺伝子発現量の差異をシングルセル解析等の手法を用いて検討することで、ナイーブな脂肪由来間葉系幹細胞のなかから、分化誘導能に優れたポピュレーションを特定する検討を継続する。 遺伝子導入によってインスリン産生細胞への分化誘導効率に向上が認められたことから、糖尿病モデル動物に対する移植効果の解析を開始する。第1段階として、糖尿病マウスを対象とした移植効果を検討する。分化誘導後のインスリン産生細胞の移植によって、血糖値のコントロールに成功した後は、移植部位の違いによる必要な細胞数の検討、ならびに長期的な血糖値コントロールの評価を実施する予定である。
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