研究課題/領域番号 |
21H02379
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高島 誠司 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (40396891)
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研究分担者 |
岩森 督子 九州大学, 農学研究院, 特別研究員(RPD) (10711509)
藤原 祥高 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (70578848)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 精子幹細胞ニッシェ / 血液精巣関門 / 細胞間架橋 / 合胞体 / 密着結合 / 細胞極性 / 精子形成 / 男性不妊 |
研究実績の概要 |
本研究では、セミノリピッド欠損が『合胞体形成メカニズム』『血液精巣関門制御メカニズム』のどの過程にどのような異常をもたらすかを明らかにし、さらに、これらの知見を活かした精子形成抑制法・精子幹細胞の移植効率改善法の開発に挑戦することを目的とする。セミノリピッドが合胞体形成において果たす役割の解明とその応用については、セミノリピッドと機能的因果関係にある合胞体形成関連分子を同定し、その操作により精子形成の抑制が可能かを検証する。セミノリピッドが血液精巣関門を制御する仕組みの解明とその応用については、セミノリピッド欠損による血液精巣関門機能低下に関与する分子を同定し、その操作により精子幹細胞移植効率の改善を試みることを目指す。令和三年度実施の研究では、以下のことを明らかにした。 ①雄性生殖細胞合胞体形成におけるセミノリピドの役割解明:セミノリピド欠損精巣で出現する多核巨細胞は生殖細胞合胞体の形成異常によるものと推察される。初年度においてこの現象が生殖細胞分化のどの段階で起こるかを検証した結果、精母細胞のZygotene-mid Pachytene期にこれが出現することを突き止めた。 ②血液精巣関門制御におけるセミノリピドの役割解明:セミノリピド欠損が血液精巣関門の機能を大きく低下させることを見出した。この時、多数ある血液精巣関門構成分子のうち複数の分子の発現低下があること、血液精巣関門分子の精巣内局在が変容していることを突き止めた。また、共同研究において、血液精巣関門の形成・機能発現に関わる候補分子Cdc42の役割の一端を明らかにし、Cell Reports雑誌に報告することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染状況拡大により、一時的に研究対象となるミュータントマウスの飼育の規模縮小を余儀なくされたぶん、実験の進捗にやや影響を受けた。しかし、セミノリピド欠損による合胞体形成不全の解析については、『合胞体形成不全』を観察する上で最適な実験サンプルの調整法を確立することで、犠牲にする動物の削減とサンプル回収にかかる時間の短縮を実現した。これを次年度以降の研究に活用することで、進捗の遅れを取り戻すことが可能であると考えている。また、血液精巣関門機能解析においては、使用するミュータントマウスの導入時期が遅れたものの、無事飼育を開始することができた。加えて、新規の共同研究者を得て実験を推進し、セミノリピド欠損精巣における血液精巣関門分子の発現・局在変容に関し新しい知見が得られた。さらに共同研究において、血液精巣関門の形成・機能発現に関わる候補分子Cdc42の役割の一端を明らかにし、Cell Reports雑誌に報告することができた。 これらの状況を総合的に勘案し、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
①雄性生殖細胞合胞体形成におけるセミノリピドの役割解明:セミノリピド欠損精巣で観察される多核巨細胞の出現時期を、人為的に調整する手法を確立した。これを用いて、合胞体形成不全が多核巨細胞につながる一連の過程で細胞間架橋がどのように変容していくかを詳細に解析する。また、細胞間架橋形成に必須の遺伝子を欠損したミュータントマウスを複数導入して同様の解析を行い、セミノリピドマウスのフェノタイプと比較する。 ②血液精巣関門制御におけるセミノリピドの役割解明:野生型マウス・セミノリピド欠損マウスの双方よりセルトリ細胞を純化し網羅的遺伝子発現解析を行う。ここから血液精巣関門の機能発現に関わる遺伝子群を抽出し、ミュータントマウスの作出によりその機能を解析する。遺伝子三重変異マウスの作出になるので、第二年度~最終年度にかけての実施となる。
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