研究課題/領域番号 |
21H02389
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅野 雅秀 京都大学, 医学研究科, 教授 (50251450)
|
研究分担者 |
成瀬 智恵 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30372486)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ガラクトース糖鎖 / 造血幹細胞 / ホーミング / 血液細胞分化 / 骨髄ニッチ |
研究実績の概要 |
1)HSCのホーミングや分化の制御に関わる糖タンパク質とその糖鎖構造の解明 HSCのホーミングに重要な分子のうち,CXCR4についてそのリガンドであるCXCL12への遊走活性を,CXCR4遺伝子を強制発現させた培養細胞(HEK293やNIH3T3)を用いて,Wound healing assayとTranswell migration assayで測定した。CXCL12との結合に重要なN末端の38アミノ酸に存在するN型糖鎖(1カ所)やO型糖鎖(3カ所)の付加可能部位にそれぞれ点変異(Asn→Gln, Ser→Ala)を導入して,培養細胞にこれらのCXCR4変異遺伝子を導入してCXCL12への遊走活性を測定したところ,2ヶ所のO型糖鎖の付加可能部位が重要であることがわかった。今後はまずこれらの部位にO型糖鎖が結合していることを確認する。さらにCRISPR/Cas9法を用いてCXCR4遺伝子に同じ変異を導入したマウスを作製して,そのHSCのホーミングや分化の解析を進める。 2)HSC特異的およびMEP特異的β4GalT-1欠損マウスの作製と解析 CRISPR/Cas9法を用いてβ4GalT-1遺伝子のエキソン2をloxP配列で挟んだβ4GalT-1 floxマウスの作製に成功した。HSCや造血前駆細胞で特異的にCreを発現するVav-iCreマウスとこのマウスを交配することにより,HSCや造血前駆細胞特異的なβ4GalT-1欠損マウスの作製を進めている。目的のマウスが作製できたら,HSCのホーミングや分化の解析を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)HSCのホーミングや分化の制御に関わる糖タンパク質とその糖鎖構造の解明 昨年度はHSCのホーミングにもっとも重要なCXCR4の糖鎖に注目して研究を進めた。CXCL12との結合に重要なN末端の38アミノ酸に存在する糖鎖の付加可能部位にそれぞれ点変異を導入し,培養細胞にこれらのCXCR4変異遺伝子を導入してCXCL12への遊走活性を測定したところ,2ヶ所のO型糖鎖の付加可能部位が重要であることがわかった。少なくとも培養細胞を用いた実験では,CXCR4の糖鎖がCXCL12への遊走活性に重要なことがわかったので,マウスで同じ変異を導入して,HSCのホーミングに与える影響を解析する。以上のことからおおむね順調に進展していると判断した。 2)HSC特異的およびMEP特異的β4GalT-1欠損マウスの作製と解析 HSC特異的β4GalT-1欠損マウスの作製については,CRISPR/Cas9法を用いてβ4GalT-1遺伝子のエキソン2をloxP配列で挟んだβ4GalT-1 floxマウスの作製に成功した。Vav-iCreマウスなどとの交配を進めており,目的のマウス作製の目処がたった。以上のことからおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
1)HSCのホーミングや分化の制御に関わる糖タンパク質とその糖鎖構造の解明 CXCR4の末端に存在する2カ所のO型糖鎖がCXCL12への遊走活性に重要なことがわかったので,今年度はこの2ヶ所に実際にO型糖鎖が付加しているのかを明らかにしたのち,CRISPR/Cas9法を用いてCXCR4遺伝子にこの2ヶ所の変異を導入したマウスを作製する。目的のマウスが作製できたら,このマウスから調整したHSCのホーミング・生着能を解析する。 2)HSC特異的およびMEP特異的β4GalT-1欠損マウスの作製と解析 β4GalT-1 floxマウスとVav-iCreマウスとの交配によりHSC特異的β4GalT-1欠損マウスを作製する。さらにGATA-1Creマウスとの交配も進めて,ミエロイド系骨髄細胞特異的欠損マウスを作製する。これらのマウスを用いて,HSCのホーミングやミエロイド系細胞への分化における糖鎖の役割を解析する。
|