研究課題/領域番号 |
21H02411
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 治夫 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (40292726)
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研究分担者 |
村山 尚 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (10230012)
児玉 昌美 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (30512248)
呉林 なごみ 順天堂大学, 医学部, 客員准教授 (50133335)
小林 琢也 順天堂大学, 医学部, 助教 (60468585)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リアノジン受容体 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
2型リアノジン受容体(RyR2, 総分子量2.2 MDa)は心筋筋小胞体に局在する巨大なCa2+放出チャネルで、心収縮に必須な蛋白質である。この巨大なチャネルは、細胞質に局在するL型Ca2+チャネルより流入したCa2+が単量体当りたった1個(即ち1分子のRyR2に4個)のCa2+が結合することで開口する(Ca2+ induced Ca2+ Release)驚くべき単純な機構を持つ。RyR2には様々な部位に300以上の疾患変異が知られており、チャネルの異常活性化を起こすものと機能喪失を起こすことで、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍、特発性心室細動、QT延長症候群等の不整脈性心疾患の原因となる。近年クライオ電子顕微鏡法により構造決定が急速に進み、ドメイン構成、閉・開の構造変化等の理解も進み、ドメイン間の相互作用が「開口のための信号」の伝達に重要であることがおぼろげに見えてきた。だが、現状のモデルは中分解能で、アミノ酸レベルでの相互作用の正確な同定には程遠く、本研究の開始以前には構造に基づいた機能解析も殆ど進んでいなかった。また、これまで構造決定が行われてきた試料は全て生体から抽出・精製を行ったものであり、疾患変異がチャネルの活性異常を引き起こす機構についても全く理解は進んでいなかった。その上、RyR2をターゲットにした特異的な薬物(阻害薬、活性化薬)は存在せず、その開発が強く望まれていた。そこで本研究では、申請者らがクライオ電子顕微鏡・単粒子解析で決定したRyR2の高分解能構造に、機能解析実験や疾患変異体の構造解析を組み合わせ、RyR2の開口機構の統合的理解に取り組んだ。その結果、令和4年度には責任著者としてNature Communications誌への発表を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はクライオ電子顕微鏡による立体構造解析に成功し、Nature Communications誌への発表を行ったが(2022年度5月)、2022年7月には既にレビュー論文に引用される等、大変注目を集めている。既に5報の論文から引用されている(2023年4月)。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に発表を行った論文は、開・閉状態と、機能欠失型変異体の構造解析の構造を基にしたものであった。現在は機能亢進型変異体の構造解析に取り組んでおり、構造解析はほぼ終了している。そこで、本年度はこの構造についての論文化に必要な機能解析実験を進めるとともに、論文化を図る予定である。
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