研究課題/領域番号 |
21H02412
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
村上 聡 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30300966)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 構造生物学 / 膜輸送 / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
三者複合体を形成し機能するABC輸送体をターゲットとする本研究課題では、主に二つの輸送系を取り扱う。共にグラム陰性細菌由来の輸送系ではあるものの、一つは私たちのグループがこれまで20年間以上取り組んできた多剤排出に関わる三者複合体形成型ABC排出トランスポーターである。この種のABC輸送体は2017年に我々が世界に先駆けて構造を明らかにした。これはABC輸送体としては新たに構造が明らかになったものであり、初のType-VII型ABC輸送体としてカテゴライズされた。また、二つ目のターゲットとしてType-VIIにカテゴライズされつつも多剤排出ではなく外膜蛋白質の輸送系に関わるものも存在する。これが二つ目のターゲットである。 2021年度はこれらのABC輸送体の構造解析を中心に行うことを計画していたが、とりわけ多剤排出系に関わるABC輸送体については結晶解析を、外膜蛋白質輸送系についてはクライオ電子顕微鏡解析の両方を進める計画を立てていたが、コロナ禍にあって研究が遅れがちであり予算の次年度への繰り越しを行わざるをえなくなった。多剤排出系の結晶解析については、高解像度の構造解析にこぎ着けた。これによりこれまで十分に明らかにすることが出来なかった機能構造を新たに見出すことができた。これを裏付けるための機能研究を進める構造基盤を得た。最終年度には構造に基づく機能研究を加えて論文化を目指す。 外膜輸送系の構造解析については、これまでの献身の試行にもかかわらず結晶は得られなかった。標品の不安定さによるものであると考えられる。またチャイナのグループから分解能は十分ではないもののクライオ電子顕微鏡解析の報告があり、その研究計画については再考が必要となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造生物学分野において研究手法は多様化している。これまでは結晶構造解析がほぼ唯一の手法であったが、昨今クライオ電子顕微鏡解析の台頭がめざましい。さらにAlfaFold2などの構造予測の手法も進化中である。結晶解析は分子結晶からの回折現象をその基とするため、高解像度で構造が得られたときの信頼度の高さについては疑いようがない。一方で結晶化という高いハードルがあるために困難な実験手法であるとされる。従って、良質の結晶を得て高解像度の構造瀬光かが進められたことは構造生物学分野に於けるある程度の成功を意味すると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる今年度は、
1 三者複合体ABC輸送体のうち、リポ蛋白質輸送系に関わるペリプラズムコンポーネントとリポ蛋白質との複合体の結晶構造解析を行ってきたが、これまでの研究で我々は既に結晶構造および、溶液構造の取得に成功している最終年度にあたる今年度はこれを論文化し、成果の取り纏めを行う。
2 リポ蛋白輸送系の内膜コンポーネントの構造解析については海外のグループによるクライオ電顕構造が発表され、先を越された間がある。これまで我々は同種の三者複合体ABC輸送体の結晶構造解析を高分解能で行っており、その成果の取りまとめに向けた機能研究を進め、論文化へと繋げる。
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