研究課題/領域番号 |
21H02415
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木下 タロウ 大阪大学, 微生物病研究所, 特任教授(常勤) (10153165)
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研究分担者 |
村上 良子 大阪大学, 微生物病研究所, 特任教授 (00304048)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | GPIアンカー / グリコシルホスファチジルイノシトール |
研究実績の概要 |
グリコシルホスファチジルイノシトール (GPIと略記) はヒト細胞表面に存在する160種類余のタンパク質に結合し、細胞膜アンカーとして機能する。GPIはタンパク質に結合しないフリーの糖脂質としても存在する。GPIの生合成は形態形成、生体防御、神経系形成、受精などに必須であり、生合成欠損は、先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症や発作性夜間ヘモグロビン尿症といった重篤な疾患を引き起こす。それ故、GPI生合成に関する徹底した研究は、生体の生理と病理の理解に重要である。本研究では未だ理解が進んでいないGPI生合成の量の制御機構、GPI中間体の細胞質側から内腔側へのフリップのメカニズム、フリーGPIの実態と細胞内動態の解明を進め、制御機構を含めたGPI生合成の完全理解を目指している。R4年度は、第1の目的であるGPI生合成の量の制御機構に関し以下の進展があった。前年までに、GPIの増加に必要な遺伝子をスクリーニングした結果、ユビキタスに発現しているGPIアンカー型タンパク質であるCD55を得、CD55の前駆体が機能分子であることを見出していた。同時に小胞体膜タンパク質であるARV1も得ていた。R4年度は、CD55前駆体のC末端に存在するGPI付加シグナルペプチドが機能部位であることを示した。さらに他のGPIアンカー型タンパク質の中にCD55と同様な活性を持っているものがあるか調べ、CD48とPLET1に活性があり、どちらもGPI付加シグナルが活性部位であることがわかった。CD55とCD48のGPI付加シグナルペプチドはどちらもARV1に弱く結合すること、これらがGPIを増加させるにはARV1が必要であることを示した。以上から、特定のGPIアンカー型タンパク質の前駆体が残存した時GPI量を増加させるメカニズムの存在が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの研究目的のうち目的1が計画通り進捗し、目的2は目標を達成した。目的3についても実験を開始できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的1に関し、ARV1がGPI生合成にどのように関与するかを明らかにし、CD55前駆体がGPI生合成を上昇させるメカニズムを解明して目標を達成する。研究目的3に関し、化学合成したGlcNAc-PIが細胞表面から小胞体の細胞質側に達する経路に働く遺伝子のスクリーニングで得られた候補遺伝子の働きを明らかにして目標達成を目指す。
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