研究課題/領域番号 |
21H02420
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
柴田 直樹 兵庫県立大学, 理学研究科, 准教授 (30295753)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 構造生物学 / 結晶構造解析 / Wntシグナル伝達経路 / 癌 |
研究実績の概要 |
R3年度は,① CKAP4-DKK複合体の構造解析,② CKAP4細胞外領域全体の構造解析,③ CKAP4-抗体フラグメント複合体の構造解析,④ CKAP4-抗体フラグメント相互作用解析,について研究を遂行した。以下にこれまでの結果について概要を示す。 ① CKAP4とDKK1 cysteine rich domain (DKK1_CRD1)試料をそれぞれ別々に調製したものを混合し,ゲルろ過クロマトグラフィーを行ったが,複合体試料を得ることはできなかった。一方,CKAP4-DKK1_CRD1融合タンパク質の大腸菌発現系を構築し,巻き戻し法による試料調製を行った。得られた融合タンパク質について結晶化実験を行った。 ② CKAP4細胞外領域(128-602)のうち,構造未知の領域について主鎖の大部分と側鎖の一部についてX線結晶構造解析に成功した。これによって,高次構造も含めてCKAP4細胞外領域全体の全貌が明らかになった。 ③ 4種類の抗CKAP4モノクローナル抗体(mAb1-4)のうち,mAb1についてCKAP4との複合体のX線結晶構造解析が完了した。mAb2およびmAb3についてはCKAP4との複合体として高純度の試料調製に成功し,結晶化実験を行った。 ④ QCM装置を用いてmAb1とCKAP4の相互作用解析を行った。mAb1をセンサーチップに固定し,CKAP4(465-602)を逐次的に反応槽にインジェクトした。CKAP4(465-602)の濃度が低い(< 10 nM)領域では振動数変化の再現性が悪かったため,正確な解離定数を得ることができなかったが,5-10 nMの範囲内にあると見積もられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①~④の各項目について,現時点における研究全体に対する達成度は以下の通りである。 ① CKAP4-DKK複合体の構造解析(30%) ② CKAP4細胞外領域全体の構造解明(80%) ③ CKAP4-抗体フラグメント複合体の構造解析 (30%) ④ CKAP4-抗体フラグメント相互作用解析(20%) 以上を総合すると40%まで到達しており,全体的には概ね計画通りに進行していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
①~④の各項目について,研究の進捗状況をふまえ,以下の方針で研究を進めていく。 ①現時点でCKAP4-DKK1_CRD1融合タンパク質については結晶が得られていない。CryoEMによる単粒子解析を視野に入れ,DKK1_CRD1よりも分子量が大きいDKK3_CRD1-CRD2を用いて試料調製を行う。 ②CKAP4細胞外領域の構造解析はほぼ完了したが,まだ側鎖の構造が不明な領域があるため,引き続き結晶化条件の改良に取り組む。 ③mAb2-CKAP4,mAb3- CKAP4複合体については現時点で結晶が得られていないため,CryoEMによる単粒子解析を並行して行う。 ④CKAP4(465-602)は10 nM以下では四次構造が壊れるためにmAb1と相互作用しなくなる可能性が考えられる。CKAP4細胞外領域は短い断片になると単量体になりやすくなるため,CKAP4細胞外領域全体または465-602よりも長い断片を用いて測定を行う。また,他の抗体についても解離定数の見積もりを行う。
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